[携帯モード] [URL送信]

GOLD RUSH!
天狗面9

「ちょっ、倉間!鳥ちゃんに寄るな!」
「何してんのツゲさん!俺、昼間言ったばっかりだよねぇ!?」



 過保護者が現れた。倉間との出会いと言い、こうもタイミングが良いと何者かの陰謀を感じる。
 そういえば、何でもかんでも誰かの陰謀にしたがるのは日本人の特性だとか。私もしっかりジャパニーズだなぁ…。

「聞いてる!?」

 聞いてない。ということで質問には答えず、困った顔を作る。

「心配かけてごめんね。けど私の言い分も聞いてくれないかな」
「…わかった」

 今が昼間だったら、言い包めるのに良心の呵責を感じたかもしれない。空霧くんって素直なお人好しだし。私より背も低いし。

「その人が倉間優って知らなかったから、私も名前聞いて驚いたんだよ。けどいきなり逃げたら逆に興味持たれそうっしょ?だからあんまり印象に残らないようにお茶一杯飲む間だけ話したらとっとと退散しようと思ってたんだ」
「…うわ…。じゃ、じゃあ俺ら逆に邪魔しちゃった?ごめん、マジごめん!」

 嘘は吐いていない。結婚詐欺師のごとき倉間の手口の悪質さに、つい揶揄っちゃったものの、初めは本当にそのつもりだった。空霧くんが慌てだす。

「や、空霧くんは心配してくれたんっしょ?」

 にっと笑って、空霧くんの頭を撫でる。

「けど結局迷惑かけてるし…」
「あはは。気にしなくて良いって。けど本当にばっくん、倉間が嫌いなんだね」

 とりあえず空霧くんの気を逸らせるために、言い合う二人に視線を向ける。
 言い合うという表現には語弊があるかもしれない。ばっくんが一方的に倉間に突っ掛かってるだけだ。倉間も言い返してるけど、完全に遊んでるし。にやにやしてるし。

「お前彼女どうしたんだよ!」
「彼女?いつの話?てゆーかどれの事。多すぎてわからないんだけど」
「何股してんだ!?つーか『どれ』って、物扱いすんなよ!」
「羨ましい?独り身だもんなぁ。俺のお下がりで良いなら紹介するよ」
「要らねぇよ!この色狂い野郎」
「色狂いねぇ…。獏くんには言われたくない単語だ」
「…は?どういう意味?お前にふさわしい言葉だろうが」
「夜な夜な乙女の夢の中に潜り込んでる獏くんにこそふさわしいだろ?」
「ちょっ、それは食糧確保のためだろうが!紛らわしい言い方するなよ!」
「間違ってないだろ?友達とか言いながら、実は小鳥ちゃんの夢も食べたことあるんじゃないの?」
「…………ま、ままままさかぁ!?鳥ちゃんの夢を食べるなんてそそそんなぁっ」

 黙って聞いていた空霧くんがぴくりと反応した。ばっくんの下手すぎる嘘には流石に気付いたのだろう。むしろ今のを信じてくれる奴は馬鹿を通り越して天使だ。他人を疑わないにも程がある。

「獏。ツゲさんの夢喰うなんて…どういうこと」

 いつもより一オクターブ低い声に、ばっくんが震える。語尾に疑問符が付いていないところが迫力倍増。
 今や空霧くんの怒りの矛先は完全にばっくんに向いて、ばっくんの意識も完全に空霧くんに向いている。
 倉間が呆れているのは、誘導尋問じゃなくて挑発だったのに、ばっくんが勝手に自爆したからだろう。馬鹿すぎるよばっくん。空笑いが湧いてきた。
 とっくに温くなった紅茶を飲み干す。



 悪目立ちしていることだし、とっとと店を出よう。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!