GOLD RUSH!
天狗面7
喰っては捨て、喰っては捨て。捨てられた【彼女たち】にとっては、なんて理不尽な仕打ち。
けれど、理由が無い訳じゃない。
嫌いだから酷い目に合わせてやりたい――なんて、単純な心理。
あまりにも単純で可愛い…とは流石に、私も女なので言えないけれど。
「小鳥ちゃん、前に見たとき制服だったよね?麗明の」
「そうだね」
「頭良いんだ」
倉間はにこにこと笑っている。心底そう思ってる表情だけど、先入観を持ってから見ると微妙に目が冷たい気もする。
「麗明ん中では普通だよ。テストは好きだけど」
「テスト好き?それヤバいって」
そういえば、もう日が落ちたな、と思う。夕暮れは、橙から紫、群青へ。喫茶店の外にはライトの影に薄闇が紛れている。
「倉間くんは嫌い?」
「もっと砕けて呼んでよ。ユウ、とかさ。好きになれる要素が無い。勉強の何がイイわけ?」
「倉間、勉強じゃなくてテスト。面白いよ」
「だからどこが?」
「普段きゃあきゃあ煩い人とかが、揃って黙って紙切れに向かってしかめっ面してるとこ」
私が言うと、倉間が吹き出した。何が楽しいやら。
「小鳥ちゃん、性格悪いって言われない?」
「今、初めて言われた」
「嘘だね」
「本当だよ。必要ない嘘は吐かないようにしてるからさ」
「格好良い。良いこと言うねー」
「ありがと」
にこり、私も笑い返す。すると倉間が少し驚いたような顔をして、言う。
「あ、今の顔好き」
「ん?」
「笑ってるとこ、可愛い」
「倉間程じゃないよー」
「いやいや、何言ってんの」
身を乗り出してくる倉間。顔が近い。
これで人間が嫌い、捨てるために女を釣り上げるっていうんだから、演技派だなぁ。
感心する。倉間は顔が良いから、天然くさい褒め言葉なんて向けられたら大抵の女の子は堕ちるだろう。
一気に惚れることは無くとも、少なからずときめくに違いない。会う回数を重ねて、少しずつ口説いて、ずぶずぶに恋情に浸らせて。
…悪質な結婚詐欺師みたいだ。
倉間の本性を聞いておいて良かった。知らなければ引っかかってたかもしれない。
けど可愛いと言って貰えたのは素直に嬉しいので、もう一回、同じ様に笑って見せた。
「本当、1300年前の倉間程じゃ無いって」
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