imagination illusion 5 斬って、斬って、斬って、 大地は赤く染まって枯れ、 血を吸い過ぎた剣は鈍器に変わる。 戦場に美しいところなど無い。 見上げた空すら狂気じみている。 切り取られた一瞬であるならば、或いは耐えられたのかもしれない。 けれど此処は、何時終わるとも知れない地獄。 狂わずにいることは奇跡に等しく、そして。 ――狂った者ほど、強い。 嗚呼、会いたい。 赤色は彼女の象徴だった。 沈む夕日、登る朝日、宙を舞う鮮血。 赤色を求めた。 そのとき確かに、僕は狂っていた。 そうでなければ絶望してしまいそうだったから。 手に残る生々しさより、記憶の中の薔薇色に縋るのに必死で。 階級が上がって、帰還命令が下った。 帰って来られた。 花屋で薔薇を一輪買って、あの古くて汚いアパルトメントの部屋のドアを叩く。 ――彼女は、居なかった。 [*前へ] [戻る] |