[通常モード] [URL送信]

imagination illusion




斬って、斬って、斬って、
大地は赤く染まって枯れ、
血を吸い過ぎた剣は鈍器に変わる。
戦場に美しいところなど無い。
見上げた空すら狂気じみている。
切り取られた一瞬であるならば、或いは耐えられたのかもしれない。
けれど此処は、何時終わるとも知れない地獄。
狂わずにいることは奇跡に等しく、そして。
――狂った者ほど、強い。

嗚呼、会いたい。

赤色は彼女の象徴だった。
沈む夕日、登る朝日、宙を舞う鮮血。
赤色を求めた。
そのとき確かに、僕は狂っていた。
そうでなければ絶望してしまいそうだったから。
手に残る生々しさより、記憶の中の薔薇色に縋るのに必死で。

階級が上がって、帰還命令が下った。
帰って来られた。
花屋で薔薇を一輪買って、あの古くて汚いアパルトメントの部屋のドアを叩く。

――彼女は、居なかった。






[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!