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ベリィライク
なみだをぬぐう。



今年のミス青高は3年C組の砂川琴乃(副会長)で、準ミスは3年D組の奥野桜。ミスターは3年A組の浅野忠義。準ミスターは、同じく3年A組の岡崎海人でした。岡崎先輩はともかくとして、性格の悪さを隠そうという気すら感じられない浅野先輩がミスター青高とは、驚きの結果である。あれでいて浅野先輩は友人が多いらしいので、予想できなかった結果でも無いのだけれど。
会長は岡崎先輩と仲が良いので、「流石は海人」ときゃあきゃあ騒いでいた。副会長と草薙に辛辣な台詞を喰らって大人しくなったが、芸能人に盛り上がる女子のような有り様だった。そんなことだから岡崎先輩の彼女に跳び蹴りされるのだ。

「取り敢えず、俺は放送掛けてきます」

無事トラブルもなく文化祭が終わり、まだ熱気の残る最中の生徒会室。文化祭前にも言ったゴミの収集場所や分別方法を改めて放送で伝えに、草薙が出て行く。松前と後輩くんは一緒に倉庫の前で暗幕などの回収とチェックをしていて、この場には居ない。私の仕事は各クラス委員に持って来てもらった文化祭後のアンケートの集計である。来年からの青海祭に役立てる予定のものだ。因みに会長は父兄などの来場者からの意見を集計している。全校生徒分の集計は存外面倒くさい。松前たちが戻ってきたら手伝ってもらおう。
ステージ撤去の指示出しに向かおうとする副会長の背に声を掛けた。

「副会長、ミス青高おめでとうございます」
「うふっふー、ありがと!」

上機嫌だ。テンションが高いのは、恐らく文化祭を終えた直後だからだろう。

「しっかしなー、何でミスターが海人じゃなくて浅野なんだよ。納得いかねー」

草薙と副会長がいなくなったことで、私語を慎んでいた会長が喋り出した。ぶつぶつ言いながら作業を進める会長は、浅野先輩とはあまり親しくないそうだ。クラスも部活も違って接点があまり無いらしい。基の話によると、浅野先輩と岡崎先輩は仲が良いそうだけれど。

「まぁ、終わった事は仕方ないですから」
「でもさぁ」

いつまでもそんなことを言っていたら浅野先輩の悪戯の標的にされますよ会長。絶妙に性質が悪いアレはトラウマ級です。お気をつけて。
脳内で会長に向けて合掌しつつ、笑っておく。あぁ、岡崎先輩といえば。

「向坂先輩は、『あたしの一番は海人だからね!』って言ってましたよ。流石は彼女ですよね。良くわかっていらっしゃる」

結果発表の後、ステージで向坂先輩が岡崎先輩に抱きついていたのだ。彼らは青高の名物カップルである。会長は岡崎先輩が大好きなので、向坂先輩と毎日のように喧嘩しているというのも含め名物だ。草薙が、会長は実は向坂先輩に片思い中なのだと言っていた。私もそう思う。

「えーと、…、唐菜っち、怒っていらっしゃる?俺、うるさかった?」
「いえ、別に…。なんか怒ってるように見えました?」
「俺の勘違いかな!」

あははーと笑った会長は、そこから静かになった。



片付けも完了して解散後。携帯がメールの着信を知らせた。…うん、私は構わないとして。

「基が一緒に帰ろうって。どうする?」
「良いんですか?」
「駄目なら誘わないよ」

後輩くんの悩んだ顔に笑う。ここは気をつかう場面でも何でもないのに。

「吉川くん」

早く行こう、基が待ってる。言えば何故かぼろりと落ちた涙に、また笑う。これだけ働かせたのだから、流石に私だって認めもする。後輩の名前くらいはきちんと覚えている。吉川栄太。仕事はもう終わったし、存分に泣けばいい。
ごしごしと制服の袖口で目元を拭いながら後ろをついて来る彼に苦笑して、涙は見なかったことにした。





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あきゅろす。
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