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ベリィライク
たしなめる。



ようやく夏休みに入った。例年通り、小唄はぐったりしている。半死人みたいな有り様だなぁと言いかけて口をつぐんだ。僕は小唄が相手だとデリカシーに欠けた物言いをしてしまうところがあるのだ。幼馴染だからって女の子に失礼なことを言ってはいけない。
夏休みになっても小唄はほぼ毎日登校している。生徒会の仕事はやっぱり大変らしい。僕だって部活が有ったりするけど、それ以上だ。今日は日曜だから学校自体開いていなくて、小唄は僕の家に課題をしに来ている。家に居るとミチコさんが五月蠅いのだとか。僕と小唄が一緒に課題をするのは毎年恒例で、僕は文系、小唄は理系というふうに得意科目が別れているから一緒にすると効率が良いのだ。

「なんか去年より疲れてない?」
「去年より飲食店希望のクラス多いし、ステージの個人発表希望者も多いし、会長いないし」
「あぁ、全国大会…」

全力で部活に打ち込んだ生徒会長はなんと全国大会に出場する。おかげでますます小唄が忙しい。

「後輩たちも副会長も頑張ってるしね」
「…栄太は?本当にもう良かったの?」
「後輩くんは元々生徒会じゃないし、弓道部もそれなりに厳しいから」

夏休みの間は手伝わなくて良いと言われたと栄太に聞いた。栄太に休暇を言い渡した本人である小唄は微笑む。虚ろな微笑みだった。握ったシャーペンが今にも手から落ちそう。…どうしよう、本格的に心配だ。

「多分、生徒会の方がきついよ」
「かもね」

とりあえず今の僕に出来ることは、小唄に麦茶のお代わりを持ってくることくらいだろうか。

「…おかわりいる?」
「いるー」

ついでに自分の分も注いでこようとグラスを二つ持ってキッチンに入ると母さんが居た。緑がかったグラデーションのサマードレスが嫌味なく似合っている。緩やかに波打つ黒髪はゆったりと纏められていて、綺麗に項が映える。

「あ、もとくん。お勉強進んだ?」
「うん、解らないところは小唄が教えてくれるし」

若干どころでなくときめきながら、それを表に出さないように微笑んだ。この年で実母にマジ恋しているなんて世間的にまずい事は自覚しているのだ。

「アイス買ってきたから二人で食べてね。あと、お昼はパスタにするって小唄ちゃんにも言っておいてくれる?」
「わかった。ありがとう、母さん」

麦茶を注ごうとしたグラスには母さんがアイスティーを淹れてくれた。確かに麦茶とストロベリーアイスの組み合わせは微妙すぎる。

「小唄、母さんから差し入れ。昼はパスタだってさ」
「綾子さん素敵すぎ」
「当たり前でしょ?」

綾子は母さんの名前だ。小唄も母さんに懐いていて、うちで食事を摂っていくのはそう珍しいことではない。逆に、母さんが居ないときは僕が唐菜家で食事を摂る事もある。
ちらりと小唄を見る。アイスを口に含んで上機嫌だけど、顔色はあまり良くない。

「働きすぎ、だよ。なんなら僕も手伝うのに」
「せっかく休みなんだから、綾子さんと居れば?」
「…頑固者って自覚有る?」

僕が溜息を吐くと、ごめんねと言って小唄は笑った。





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あきゅろす。
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