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夢の小桜
夏祭り【ソーマ・シックザール】
『夏祭り』


「そうだ。夏祭りに行こう」
「あ?」
「いや、だから夏祭りに…」
「何故そうなった」
「今日、近くの神社で縁日やってるんだよ」
とある日の昼下がり。
エイジス学園の中庭で、雪咲雪華とソーマ・シックザールは祭りについて話していた。
「浴衣着て、アリサ達も誘ってさ。みんなで行こーよ」
「俺はパス」
「ええ!?なんでよ!」
「誰が好き好んで人混みの中入るかよ」
「………じゃあいいよ。無理やり連れて行っても楽しくないもんね…」
寂しそうな声でそう言い、雪華は先に教室へ帰って行った。
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「ごめん!下駄がなかなか見つからなくって遅くなっちゃった」
「お、雪華!相変わらず綺麗に着こなすよな〜お前」
「ふふ、ありがと。コウタ!でも、やっぱりコウタとユウとアリサの浴衣姿は新鮮だねぇ」
今回集まったのは同級生の藤木コウタ、神薙ユウ、そして1つ下のアリサ・イリーニチナ・アミエーラ(通称アリサ)、雪華の4人。ソーマは結局来なかった。
「あれ、雪華ソーマは?」
「それが…誘ってはみたんだけど、人混みが嫌だって言って来てくれなかったの」
「そっか…。まぁ、仕方ないよね!無理やり連れて行っても楽しくないしさ!」
「あ、それならさ。丁度男女2人ずつだしユウとアリサ、オレと雪華でそれぞれ回らねぇか?」
「えっ、ちょっとコウタ先輩!?何言って…」
「うん、それいいね!私は大賛成だよ!」
「雪華まで!?」
「ユウもそれでいいでしょ?」
「え?あ、ああ。うん」
「よしっ!それじゃ決まりね!コウタ、行くよー!」
「おうよ!」
そして、雪華とコウタは屋台が出ている方へ走っていった。
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「なぁ、雪華…。お前、まだソーマのこと好きなのか?」
「うん…」
「ソーマはさ、悪い奴じゃないってのはわかるんだよ。ただ素直になれないってだけだってさ」
走り出して少し遊んだ後、2人は端の方で休憩していた。
コウタはこれを好機とみたのか、コウタは静かに問いかけてきた。
「でも…、お前はそれで寂しくはないのか?お前は、それで満足してるのか?」
「コウタ?」
「俺なら、お前を悲しませたりなんかしない!俺は…、お前のこと…!」
雪華は、以前…ソーマと付き合う前に、コウタから一度告白されたことがあった。その時、雪華はもちろん断ったがコウタはずっと好きでいてくれていたらしい。
「……、ありがとうコウタ。こんな私のこと好きでいてくれて。でも、私は…やっぱりソーマの事が好きなんだ…。この想いに嘘をつくことはできないよ」
「……………そっか。それじゃあ、最後の悪足掻き。それくらいは許してくれよ?」
「へ?こ、コウタ、何言って…」
すると、コウタは端末を取り出すと何処かへ電話をかけた。
「あ、ソーマ?俺だけどさ、お前が雪華のこと泣かせるんだったら俺が雪華貰うから」
「えっ!?ちょ、コウタ!?」
「……俺、本気だから。いざとなれば、力ずくでも奪うからな」
それだけ言うと、コウタは端末の通話終了のボタンを押して一方的に通話を切った。
「こ、コウタ…?今の……」
「まぁ、これでさすがにソーマも来るだろ。後が怖いけどな」
「え?てことは、まさかワザと…?」
だが、コウタは何も答えずに苦笑だけして、雪華の手を引いて上の方の御社へ向かった。
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御社に着き少し経った頃、コウタはそろそろかと呟いて、雪華の体を抱きしめた。
「こ、コウーー」
「俺さ、やっぱり諦め切れなくて雪華に迷惑かけると思う。でも、お前がソーマのことがすっげぇ好きだって事、分かったから。多分、もうソーマと付き合ってるうちは告白しないと思うから。だから…」
「コウタ…」
ーと、その時。
「コウタ!そいつから離れろッ!」
第三者の声が響く。
「ソーマ…!」
雪華は反射的に第三者、ソーマの方を見やり、その名を口にした。
「雪華は俺の女だ」
「惚れた女に祭りに誘われても断った奴がそれを言うのかよ」
「てめぇ…!」
「雪華の気持ちも考えろよ!いっつも気ィ遣わせてばっかで…。俺にコイツを諦めたこと後悔させんないでくれよ!」
そして、コウタは雪華から体を離し、すれ違いざまにソーマに何かを言って祭りの雑踏の中に消えて行った。
(コウタ…、ゴメンね……)
「………、ソーマ、帰ろっか」
「……ああ」
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‡ソーマの自室‡
「……」
「……」
帰ってきたはいいものの、部屋に着いても2人の間には何とも言えない沈黙が満ちる。
すると、さすがにこの沈黙に耐えかねたのか、雪華が口を開いた。
「ソーマ、私は絶対別れないからね」
「だが……」
「今回コウタに言われて、少しでも思うところがあるなら、別れるなんて逃げ道に行かないで、ちゃんと向き合ってよ」
「雪華……」
「それと!これからは、たまには私の我が儘にも付き合ってよね」
「ああ。……今まで済まなかったな」
「いいよ。今後、ちゃんと直してくれるならね」
そして、夜空に咲き誇った大輪の華の光の下、二つの影はひとつになった。





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あきゅろす。
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