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 小躍りする姿が目に浮かぶ。助けようと思う者が、一人でもいるなら助かる可能性は高いが、ほぼ全ての住人が毛嫌いしているという専らの噂だ。

 しかも赴任した神父の大半が、長くて一週間、短くて二日か三日で元の教区に戻ってくる。

 これはもしや、絶体絶命というものだろうか。

 足元においていた荷物を手繰り寄せて、一冊の分厚い本を取り出した。

 不安を増長する考えを追いやろうと、本を開く。

 慣れ親しんだ文字を見ると、何故か安らぐ。紙に書かれた言葉など、微塵も信じていないというのに。

 創世から格言までもを書き記したこの本は、長く付き合ってきたもの。聖職者である自分には、必要不可欠の存在だ。

 毎日のように手にとっているせいか、赤茶けた毛織物のカバーの表紙は少し毛羽立っていた。それは既に意味を成さない。

 文字を目で追いながら彼は祈る。

(主よ……か弱き人の子を、どうか守りたまえ……)

×××

 青葉の中に咲くのは、可憐な白い花。この場所だけ、どこか神々しい雰囲気が漂い、清廉な空気に包まれていた。

 ルーシェは足早に小さな木に近付くと、その姿が無事なことを見届けて、その場に座り込んだ。

「……良かった。無事だったのね」

 急いでいたこともあり、息が上がっている。深呼吸を繰り返し、落ち着いたところでキイチゴに笑顔を向けた。

「森に魔物が出るって聞いたし、旅人さんたちもたくさんいたし……あなたのこと見つけられちゃったらって思ったら」

 いてもたってもいられなかった。

 目の前にある低木樹の姿をしたこの木は家族の様な存在だった。森に息を潜め、各々の生活をする動物たちよりも、このキイチゴの存在は特別だった。

 赤い瞳を静かな周囲に向けて、声を潜めて彼女は尋ねる。

「森は大丈夫かな? みんな無事なのかな?」

 答えは風の囁きとなって返る。囁きの歌声はルーシェの心に確かな安心感を植え付けた。

「そう。旅人さんたちも大丈夫なのかな?」

 キイチゴに話しかけるように呟けば、森は微風に揺れて話し出す。彼らは入り組んだ道に入り込み、立ち往生していると。

 中継地点となる、山林に点在する村は麓から一直線だ。しかし村から離れ、一本でも間違った道に入ればこの森は自然の要塞、迷宮となって姿を現す。

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あきゅろす。
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