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まぁるいしかく
―4―4
あちらでは、緊張しながら喋っている。
……うわっ、立つのかよ。

よろしくお願いします、と言い着席して、前席の女子とキャーと騒いでいた。小声で。

「静かにねー。はい、じゃー、山本くん、どうぞ」

今度はこちらの山本に手を向けられる。
立ち上がる山本に、こそっと頑張れ〜と言うと軽く睨まれる。

「山本友介です。西納中、部活は陸上でした。よろしくお願いします」

小さくお辞儀をして、座ると、ぱちぱちと拍手があった。
あまりにも簡単な自己紹介だったので、山本――友介に、こそっと耳打ちをした。

「…そんなんでいいの?」
「……無駄な事言っても仕方ない」


えー、そんなものかなー、と言った轍に返ってくる言葉は無く、かわりに溜め息が聞こえた。

小さく笑いをとる者もいれば、部活を頑張りインターハイ目指しますと宣言する者もいたりと、中々賑やかに時間が過ぎていった。

「頑張るのよー。応援するからね。では次は堀田さん」
「はい」

三坂のすぐ前に座っていた女子が、立ち上がった。
前列の人は後ろ向いてねー、と三坂が言っていたので、その女子もくるりとまわり、後ろを向いた。

「堀田南姫です。中学では茶道部に所属していたので、高校でもまたしたいと思っています。…よろしくお願いします」

花を背後からパッと背負ってるのが似合いそうなその女子、南姫は、花、より無愛想、がぴったりしっくりな顔、声そのもので言い、直ぐ様座ってしまった。

「堀田さんは茶道だったのかー。そうそう、隣の担任の先生が茶道の顧問なのよ。昨年の文化祭では、着物着てたなー」

おっと、逸れたかな。と言って三坂は次の生徒に手を向けた。

「……ぶあいそーな…。な、山本」

あれまぁ、と同意を求めて友介に向かえば、その友介はじっと前を見ていた。

前を。

座った南姫を。

「…ふーん?」

たったそれだけの事。
しかし何故か物凄く気になった。



「はい、次は高山君。あ、みんな知ってるか。そうです、遅刻して来た子です」

あはは、と笑う声がする。
緊張がとれてきたのか、随分と和やかだ。
まぁ、それは発表した者だけに言える事なのだが。

「失礼な。間に合ったじゃないですか。式には」
「まー、そんな事言いますか。ま、いいですよ。君と磯木君には後でご褒美がありますから」
「え?……わっ」

いきなり名前を出され、椅子をギコギコと前後に揺らしていた轍は、そのまま椅子を後ろに倒してしまうところだった。


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