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まぁるいしかく

可愛いらしく整った顔が、表情を変える事もなく、轍と少女を見ていた。

「聞こえない?それともはっきりと言った方がいいのしら。磯木轍は、私のよ。…って」
「姫っ!」

轍に名前を叫ばれ、すらりと伸びた足を動かしスカートをふわりとはためかせ、二人の前から姿を消した。

その後を追おうとして、轍が階段を下りて、すぐの所でくるりと戻り、少女の手をぎゅっと掴む。

「きゃっ…!」
「何から言ったらいいのか分かんないけど」

ぐっ、と掴み寄せて、少女はまた小さく、きゃっ、と言った。

「あいつは彼女じゃないから。私のなんて言ったけど、違うから。あと」

更にくっ、と握った手に力が入った。

「俺なんかを好きんなってくれてありがとう。気持ちは、すごく嬉しかった。我が儘を言わせてもらったら、好きになった事を後悔しないで、ほしい」

手が離れて、ものすごく強く掴まれていたんだな、とふと少女が思った時には、轍は階段を下りたところだった。

「……せん、ぱい、……磯木先輩!」
「のわぁいっ!…はい?」
「私、私っ、……後悔なんてしてません。しません!わたしこそ、わたしこそ…」

下りて遠くからでも分かるくらいに、少女は泣きそうな顔をしていた。

それでも、言葉を続ける。

「私の方こそ、ありがと、…ございましたっ」

礼をする少女が顔をあげた時に、笑って、「みっちゃん、ありがとう、」と言った轍を見て、あぁ、好きになってよかったな。と少女は思った。





「ひめっ!」

轍は先程の少女、南姫の後を追って、保健室の前に着いた。

南姫は、保健室のドアを開けるところだった。

「磯木君。…何?」
「……何じゃねぇよ」
「…あぁ、さっきの事?もしかして」
「もしかしなくても、それだよ」

はぁ、と溜め息をつく轍をちらりと見て、ガラッと戸を開け中へと入る。

「よかったの?さっきの子一人にして」

保健室に置かれているソファーに座りながら、轍に尋ねる。

眉を寄せた顔をして、轍も中に入る。

「よくねぇよ」
「……でしょうね。告白の時にあんな事されたらね」
「分かってんならすんなよ」

轍は座る南姫を見下ろす形で南姫の向かい側に立つ。


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