まぁるいしかく 8 可愛いらしく整った顔が、表情を変える事もなく、轍と少女を見ていた。 「聞こえない?それともはっきりと言った方がいいのしら。磯木轍は、私のよ。…って」 「姫っ!」 轍に名前を叫ばれ、すらりと伸びた足を動かしスカートをふわりとはためかせ、二人の前から姿を消した。 その後を追おうとして、轍が階段を下りて、すぐの所でくるりと戻り、少女の手をぎゅっと掴む。 「きゃっ…!」 「何から言ったらいいのか分かんないけど」 ぐっ、と掴み寄せて、少女はまた小さく、きゃっ、と言った。 「あいつは彼女じゃないから。私のなんて言ったけど、違うから。あと」 更にくっ、と握った手に力が入った。 「俺なんかを好きんなってくれてありがとう。気持ちは、すごく嬉しかった。我が儘を言わせてもらったら、好きになった事を後悔しないで、ほしい」 手が離れて、ものすごく強く掴まれていたんだな、とふと少女が思った時には、轍は階段を下りたところだった。 「……せん、ぱい、……磯木先輩!」 「のわぁいっ!…はい?」 「私、私っ、……後悔なんてしてません。しません!わたしこそ、わたしこそ…」 下りて遠くからでも分かるくらいに、少女は泣きそうな顔をしていた。 それでも、言葉を続ける。 「私の方こそ、ありがと、…ございましたっ」 礼をする少女が顔をあげた時に、笑って、「みっちゃん、ありがとう、」と言った轍を見て、あぁ、好きになってよかったな。と少女は思った。 「ひめっ!」 轍は先程の少女、南姫の後を追って、保健室の前に着いた。 南姫は、保健室のドアを開けるところだった。 「磯木君。…何?」 「……何じゃねぇよ」 「…あぁ、さっきの事?もしかして」 「もしかしなくても、それだよ」 はぁ、と溜め息をつく轍をちらりと見て、ガラッと戸を開け中へと入る。 「よかったの?さっきの子一人にして」 保健室に置かれているソファーに座りながら、轍に尋ねる。 眉を寄せた顔をして、轍も中に入る。 「よくねぇよ」 「……でしょうね。告白の時にあんな事されたらね」 「分かってんならすんなよ」 轍は座る南姫を見下ろす形で南姫の向かい側に立つ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |