[携帯モード] [URL送信]

保健室の先生
5
保健室へと向かう途中、ローカで先程の少女の姿を確認した

ニヤリとわざとらしく口角引き上げ


「よォ、遅刻娘…先生にゃァ、ちゃんと言い訳して来たのかァ?」


「え?」


ククク…と後ろから声が聞こえた

誰だろうと振り向くと、先程の桜に木下で会った男がニヤと笑って立っていた


『あー!!さっきの!!お父さん』


眼を見開き驚いて声を上げた


『遅刻娘って、好きで遅刻したワケじゃなんもん!!』


少女に高杉は不機嫌そうに目線を細め相手の顔を見やり


「お父さんじゃねぇよ…好きで遅刻したら大問題だろうが…バカかお前ぇは…。なんなら指導室に連れてってやろうかぁ?」


『ななな、なんで指導室!?…ん?ってか、え?お父さんじゃない?』


「子供どころか、結婚もしてねぇよ」


まだ言うかと、眉間にシワを寄せ、不機嫌に低い声色で言い向けた


『え?じゃ?何?』


「だから…見れば分るだろうがぁ…」


本当に分らないと言った、スットンキョンな表情で見る相手に軽く肩を竦ませつつ白衣を示した


『…』


まだ、分らないであろう少女に、グイっと顎先を掴みジッと見られ


「俺ぁ保健室の先生だ」






……






『ええええ〜!!』


言い聞かせる様に言われた言葉に、一瞬解釈できずにいたが、意味が分りローカだと言う事を忘れて大声を上げて驚いてしまった


『な、な、な、なんで保健室の先生!?』


「ぁあ?ちゃんと目ぇ開けてんのか?」


『ちゃんと開けてます〜!…なんで寄りによって私が目指してる保健室の先生…』


顎先掴まれながら、怯むことなく言う台詞に口角上げ


「ほぉ…じゃあ、保健委員になってんのか?散々扱き使ってやるから覚悟しとけや。その前に指導室だ遅刻娘。悪い子には説教だ」


『何で指導室!?悪いことしてないもん!!』


「ほぉ…遅刻は悪いことじゃねぇと?反省しろ反省」


ジロリと視線細めて睨み、少女の台詞にピクリと眉引きつらせ


『こっそり忍び込めたもん!間に合ったもん!』


口を尖らせて謝る様子のない相手に、口角を引き上げれば、顎を捕らえていた手を頬に伸ばし







むにっ

『いたたたたた!!』


「小学生のガキみてぇな頬だなぁ…ククク。おら、謝れや」


高杉は少女の頬を軽く引っ張りやった


「謝んねぇと、どこまで伸びるか試すぜぇ?」


『小学生でもガキでもないです!
ちょ!ちょっと!一回止めて!一時止めて!』


ニヤニヤ笑う相手に頑として謝りたくない為、伸びる頬に痛みを感じながら抵抗した


「ガキはガキだろうがぁ…謝るまでこのままだ…おら」


「イタタタ!間に合ったからいいじゃんかー!!」


更に引っ張られ、痛みに耐えながら尚も抵抗を続けた


「そりゃぁ飲んで運転して、正気だから良いじゃないですかって言ってうようなモンじゃねぇか」


睨みつけながら軽く肩を竦ませつつ鼻で笑い、空いているもう一方の手を反対の頬にやり、両方から引っ張り始めた。


『イダダダダ!!ロープ!!ロープ!!』


頬を引っ張る相手の腕をバンバンと叩く


「誰が止めるかよ。強情だなヤツだなぁ…さっさと謝れば良いモンを…」


『やだー謝んないー!!』


ここまで来ると、謝ったら負けだと思い、意地でも耐えて見せた


「よく伸びるな〜おい」


両頬を引っ張り、少し涙目になってる少女に、今度は楽しげに両頬を掌で挟み込み


『うにょー!!』


「ぷっ…ブサイクな顔」


ムニムニと挟んだ頬を掌で戯れつつに鼻で笑い


『うー!!』


そんな相手に変な顔をしながら怒ってみたが、この相手には効かない

お互い引くことのない戦いが繰り広げられていた










もうすくHRが始まるにも関わらず急ぐ様子もなく、銀色の髪を揺らしながら、のんびりとした歩調で歩いてると、フと前に揉めてるであろう見知った顔

先ほど別れた高杉と、入学式で見掛けた遅刻女子生徒

面倒だな、と思いながらも取り敢えず二人の間にわって話しかけ


「ハイハーイ、お二人さん。仲良いのも分るけど、もうSHR始まるからね〜?」


『仲良くないよ!見て分んない!?』


緩ーい声で、声を掛けてきた教員に、何を見てそんなこというのだ?と、必死に頬を挟む手を緩めなだら、ツッコんだ。


「かなり、仲良さそうに見えるぞー。何ですか、お前等中二カップルですかー?コノヤロー」


『中二カップルって何ー!?そんな純粋な感じじゃないよ!このセンセー!?』


緩く頭を掻きながら、二人の遣り取りを死んだ魚のような目で見ながら

「えっと…君は確かウチのクラスだよねぇ?」


銀髪頭の教員に言われ、クラス担任だと分り目を輝かせ


「センセーZ組のセンセー!?お願いします!!この魔の手から助けて下さい!!どうにかして下さい!!」


「あーうん、一応担任?どうにかってな…」


チラッと、高杉の方に目をやり「なんだぁ?」と、イラつきながらこっちを見返してくる相手に溜め息をつきながら近づき、軽く肩を竦ませ高杉の肩を掴んだ


「高杉ぃ〜生徒遅刻させたらアレだ、取り敢えず離してやれば」


『ほら、保健室の先生!HRが始まるって!また遅れるから!今度は貴方のせいになっちゃうよ!ほら!?』


「ちっ…」


銀八の言葉に自分の所為になるのも色々と面倒だと思い、少女の頬から手を離した


「離しゃ良いんだろう、離しゃぁ…」


手が離れた頬を擦りながら、高杉にニヤとした顔を見せ、銀八の方に向かい笑顔で頭を下げた


『あ、ありがとうございます銀髪天パー先生!悪の手から助けてくれて!』


悔しげに小さく舌打ちをし挑発してきた少女を見やり


『イダぁ!?』


ピンと軽くデコピンをお見舞いした


「お前ぇが保健室に来ンの楽しみにしててやるよぉ…」


対抗するように挑発的に笑えば、ゆっくりと白衣を翻し己のテリトリーへと帰って行った



「…大丈夫?お嬢さん? 」


デコピンされた額を手で押さえたまま固まってる少女の顔を覗きこんだ


『…だ!』


「ん?」


『やだー!!保健室行きたくないよー!!保健委員とか希望するんじゃなかったー!!』


「ぅおッ…!」


急に声を上げたかと思うと、銀八に掴み掛かった


『すいません!銀髪天パー先生!私の役員変えて下さい!何か夢とか希望とか、あそこに行ったらなくなりそうです!』


掴みかかってきた少女にポリポリと後頭部を掻き


「先生そんな名前じゃねぇから。っつか失礼じゃね?」


呼び方が気に入らず眉を潜め、ムゥと不機嫌そうに唇を尖らせた


「って言うか、委員決めが意外にスムーズに決まっちまったから、変えたら変えたで暴動起こりそうだから却下」


『可愛い生徒だと思って〜!』


それでも尚も食い下がることなく泣きながらお願いしてると、肩に手を置かれた


「つーか、大人になったら嫌でも夢も希望も無くなっから、今の内に大人になれて良いんじゃね?」


やる気ない口調で却下され、掴みかかってる手を剥がされた


『っていうか、生徒に夢も希望も無くすようなこと言わないで下さいよ〜(泣)委員変えて貰えないんですか〜!私にあの先生のいる保健室に行けというんですか〜!?夢が壊れる〜!』


「あー…まぁ、頑張れ。アイツもンな悪い奴じゃねェから……多分…」



相変わらず妙な気怠さ纏わせているも軽く相手の肩叩けば不意に瞳に光り宿らせ


「そんなんで壊れる夢なら始めっから夢なんて言うんじゃねーよ。オメェにも将来の夢とかあンだろォ?」


『…!』


急に瞳色を変えた担任に少し怯んでしまい俯く

が、直ぐにバッと顔を上げて真っ直ぐに相手を見やった


『保健室の先生は小さい頃からの夢だもん!絶対叶えてやるもん!!』


強い瞳で言う少女に、フッと優しく笑い、ポンと頭に手を置いた


『じゃあ、頑張れよ。先生応援してっから』


ワシワシと頭を撫で上げた

そんな担任に、ウンと笑い頷いた


「…つか、ほら、早く行かねェとホントに遅刻だから。遅刻届出してェの?」


『え?それヤダ!?教室に行きます!!』


慌ててその場を走り出した


『センセーまた後でねー!!』


走り出しながら大きな声で言う生徒に、軽く肩を竦ませつつ先に職員室へ向かおうと反対側へ向き、振り返りもせず手を振れば、急ぐでもなく、ゆったりと歩いた





















保健室へと帰る途中、先程銀八に見せて貰った名簿で、顔写真から名前思い出した


『山河 陽菜…か…、ククク…覚えておいてやるよ…』


さも楽しげに笑み滲ませつつ呟き漏らし、保健室へと帰って行った

[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!