銀色世界で二人三脚
かんざしと‥・
お爺さんの苦しみで朦朧とした様子が手の届く目の前にある。
それでも自分は騒いだりしない。
攘夷戦争で死に際は飽きるほど見たから。
―ドクッドクッ
逆に内心はいつもより煩い。
(そんな所を出さないのが、今日の自分。今とってもクールでしょ!!俺だってできるんだよ!)
「銀時兄さんが、初恋の人を見つけてくれますから‥‥羨ましいですねえ」
「はっ‥‥そ、か」
この人は幸運だ。死ぬ前に、好きな人に会える。
「‥自分の初恋は始めて十数年。もうすぐ、自分はその人に追いついて同い年になりますよ」
それに比べて、自分はなんて馬鹿なんだろう。
すでに生きてもいない前世の伊達明を好きになるなんて、愚かすぎるじゃないか。
ある意味、記憶として生きてるのだけど。肉体がないなら同じものだ。
「!!‥ぐっ‥‥お、めぇ‥さん」
「どうしましたか?!」
「そこの人退いて!」
お爺さんに笑顔を向けてから、駆けつけた医師等の邪魔にならないよう自分は腰を上げる。
電話を終えたらしい新八君に、携帯電話を返してもらった。
「銀さん達、初恋の人を連れてすぐ来るそうです!間に合うと良いんですけど‥‥」
「間に合うから大丈夫ですよ、新八君」
携帯電話の時計を見ると、時間がかなり迫っていた。急いで帰れば、余裕かなという時間。
「誠に名残惜しいですけどね新八君。自分は溜まっているであろう職務に戻らせていただきます」
「えっこのタイミングで帰るんですか?!嫌ですよ僕この状況下に残されるの!」
「ごめんね。自分にはシャンプーの場所も分からない、いかつい益荒男達が帰りを今か今かと書類抱えて待っているんですっ!自分は母ちゃんじゃないんだぞってんですよ」
「それ帰りたくて言ってるんですか。愚痴なんですか、ああちょっと!進後さぁぁん!!」
引き止める青少年の言葉も状況も置き去りにして、自分は病院を後にする。
(今回は残ってみたけど・・・・・うん、自分の必要の無さを確認しただけだった!!)
メイン人物に近い立場だとは思いたいけど、本当にやる事なかった!最後までぐだぐだと居るより、潔く仕事に戻った方が最善だろうコレは。
(強くなるんだ、青少年!!)
バイクで真選組屯所へ向かう途中、大きな犬とすれ違った。
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