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銀色世界で二人三脚
かんざしと・・・
※畑山サイド※

そのままお爺さんの思い出話を聞いていたかったのだが、時計を見たらそうもいかなくなった。
そろそろ、仕事に戻らないといけない。

『この後お爺さんが死ぬって時に、なんて事考えてるんだ!』と思うかもしれない。
が、
自分は上司に頭下げて無理矢理時間とって貰って、お見舞いに来てるんだ。甘いこと言ってられない。
戻るのが遅くなると上司に迷惑をかけてしまう。

誰しも、逆らえない存在が居るって事だ。小心者には、とくに。


(しょうがない。帰ろう!どうせ初恋の人も来るんだしな!)


「あの、申し訳ないんですが・・」
「ぐはっ!!」


帰り文句を言って帰ろうとしたら、お爺さんが苦しみだした。どうやら、お爺さんの体が限界に来たらしい。
タイミングが最悪だ。

それよりもナースコールナースコール!


「おじーさん!!ちょっとォォォォ!!せっ・・・先生ェェェ!!」


叫び出す新八君。普段からツッコミで叫んでるからか、声がよく通る。


「新八君落ち着いて。ナースコールは押したから先生もすぐ来ますって」

「でも進後さん!お爺さんがこんなに苦しんでるのに落ち着けませんよ!!」


新八君が、以前椅子から立たないで座っている自分にツッコミを入れてきた。ツッコミというより、非難かもしれないけど。

苦しむお爺さんを心配して泣きそう(死ぬ寸前の人見たら常識的にそうなるか)な新八君に、

(癒されるなぁ)

とまた場違いな感想を持つ自分は、どっかイカレてるのだろうか?
彼の頭をポンと叩く。


「こんな時、焦っては何も救えないでしょう。できることを考えるんです。自分はもう『ナースコールを押す』という事をしました」


新八君に、懐から出した携帯電話を突きつける。


「新八君。君にできることはなんでしょうね‥‥?」

「・・・・銀さんっ!」


携帯電話を握りどこかに繋げている新八君を視界に残しながら、苦しむお爺さんに体を戻す。


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