銀色世界で二人三脚
局長の敵と・・・
お互いに謝罪もひと段落すんだところで、夕飯を作ることにする。
自分は新八君と一緒に台所に行ったら「戻ってて下さいよ」と言われた。
新八君は台所に人を入れたくないタイプなのかな?いやここは銀時兄さん家の台所だからソレはないか。
「進後さんも一緒に座ってて下さいよ。僕がやりますから!」
「いいんだよ。自分がお見舞いで来たんですから手伝わせて下さい」
ポンポンと気を使う新八君の頭を軽く叩いて、一緒に親子丼を作ることにした。
最近あったことやお妙ちゃんのことを聴きながら、二人並んで作る。
(なんか、いいなぁ・・・。このほのぼのとした感じ!これぞ追い求めていた平凡!平和!いいなぁ!!)
畑山進後の人生の中で一番危険の無い平和な空気に、顔が緩んでしまう。
(今まで俺何をしてきたのかなぁ・・・・)
親に『お国のために戦場へ行け』と放り出されて。戦場から寝床に帰っても年下だからこき使われてさ。
周りに『前線に出ろ』って放り出されて。オッサンの中で常に瀕死だったなぁ。
そのままこんな歳になってさ‥‥。
まさに地獄だったな。
本当よく生きてるよ。
今の世の中の方がよっぽど良い。
「おーぅい進後君寝てんのかァ?やっぱお前疲れすぎて家間違えたんじゃね?」
「へあっ!?」
いけない、いけない。
丼持ったまま意識が飛んでたみたいだ。神楽ちゃんなんかお替りしてるよ。どんくらい飛んでたんだ自分は。
「すいません。ちょっと今の現状に感激してました」
「意味わかんねーんだけど。汚くがっつく娘ッ子の食卓のどこに感激すんだよ。あー親子丼好物だったか?」
「汚いとは何アルか!銀ちゃんは不浄の塊のくせによく言うネ」
「神楽ちゃん汚い食べかすが私に飛んでるわよ?」
「大人は薄汚れてるくらいが丁度良いんだよ。俺の汚れは俺の色気を出すんだよ。ガキには感じ取れねーだろうがなァ!」
「銀さんも汚い食べかすが・・・・飛んでるって言ってんだろーがァァァ!!」
グサァァァ
ブシャァァ‥‥ドサリ
怒ったお妙ちゃんが、銀時兄さんにお箸をぶっ刺した。銀時兄さんが倒れるのがスローモーションに見える。
(あれ、さっきまで優しく微笑んでたお妙ちゃんはどこへ?あまりの豹変っぷりに戸惑ってしまうのですが!)
「あら嫌だわ。私ったら取り乱して」
勇ましくお箸をぶっ刺して居た顔から、再び優しい顔に戻るお妙ちゃん。
いやもう手遅れですけど。しっかり見てしまったんですけど。
「進後さん。何に感激してたんですか?」
冷静に新八君が話を戻してきた。そうですか慣れてるんですね。こういった場合は流していいんですね。
「え、まぁ。なんというか・・・。こんな平和な空気が感激したっていう、ね。つまらない事だよ」
「・・・平和?」
「それは違うネ!我が家の食卓は戦争ヨ!少ないおかずの取り合いは、まさにちっぽけな戦争アル!!」
「神楽ちゃーん。止めて!我が家のひもじい食卓を暴露しないでェェ!!」
丼片手に力説する神楽ちゃんを、復活した銀時兄さんが引き止める。自分で「ひもじい」と言ったらお終いだと思うけど・・・。
自分もそんな食卓事情を聞きたくなかった。
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