銀色世界で二人三脚
土方サイド/初対面編
重い息を吐いた。
真選組一の腕を持つ部下を探すが、その影は無い。
(屯所内で昼寝してねぇってことは・・・見回りか?)
そこまで考えて、即否定した。アイツが公務をマトモにするわけがない。
どこかでサボっているに決まっている。
(近藤さんもどっかに行っちまったし。まったく。どいつもコイツも真面目に仕事しねぇ給料泥棒だな)
肉体派ばかりの真選組では、書類整理できる隊員は少ない。
そのうえに自分以外の上司がまともに仕事をしないとなれば、溜まった仕事は全て副長の自分に回ってくることになる。
最近は局長の近藤までもが、ちょくちょく屯所から姿を消すから以前にも増して仕事量が増えてしまっていた。
(近藤さんには悪いが、行動をわきまえてもらわねぇとな・・・・。俺、結構ツライんですけどォォ)
土方は近藤によって急に増えた仕事量をこなしているが、実際はギリギリで疲れがピークだった。
まだ非番の日がキチンと取れているから体はもっているが、非番の次の日は終わっていない仕事が自分に回ってくるだけだ。
昨日は久しぶりの非番だった。
今日は昨日の分の仕事が自分に回ってくると思うと、頭痛が襲ってくる。
(ヤバイって。さすがの俺でも倒れるって・・・)
またため息をつきつつ、自分の部屋の襖をあけた。
「ぃっ!おはようございます、副長」
自分の部屋だと思って入ったら、見慣れない男が居た。
しっかり隊服を着ているから、同じ真選組だというのは分かるが、顔は見知らぬ顔だ。
「あぁ・・・お前どこのやつだ?」
挨拶は素っ気無く返し、職務質問みたいな事を言ってしまった。
(俺より年下だな。背も俺より下。腕っ節は強くなさそう・・・っつか、優男だなコリャ)
「先日入隊した一般隊員の畑山進後です!よろしくお願いします」
「おぉ、頑張れや」
そういえば、先日新人が入隊してたんだっけか。
最近忙しかったからな・・・。ヤベーな俺。
この畑山進後と名乗った男は、礼もキビキビとしていて中々真面目そうだ。
(これは、良さそうなのが入ったじゃねぇか)
主に事務面での話だが。
優男な見た目からは、とても実戦では生き残れなさそうに見えた。
「で、俺の部屋で何してた?」
机の前に座りながら、タバコに手を伸ばす。
すると優男は、灰皿を近くに持ってきた。
「あーっとですね。昨日の書類でですね・・・」
「あ?なんか大変なことでもあったか」
優男は気マズげに話しだした。どうやら昨日の非番中になにかあったらしい。
「ぃいいえ!まぁ大変ではあったんですが。そうでは無くてですね」
「違うのか。なんだってんだよ?」
期限切れが混じってたとか。と考えていた土方に爆弾が投下された。
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