銀色世界で二人三脚
泥棒猫と・・・
邪魔にならないように停めていると、自分を呼び出した銀時兄さんが『スナックお登勢』から出てきた。
「おー早かったな。働いてるかね進後君」
「やっぱり帰っていいですか」
さっさとバイクにまたがると、銀時兄さんに肩を掴まれた。
(ちょっ痛っ!イタタタ!)
「まてまてー。人と会話しろ。いいか?日々人との会話から始まり、会話で終わるんだよ!だから聞きましょーね進後君?」
痛いほど肩を掴まれたまま引かれて、バイクから降ろされた。荷物があるから帰らせないわけですか。どんだけ切羽詰まってんだ。
「すいません銀時兄さん。承知の上だと思いますが、いま勤務中ですので・・」
(なんなのコノ人!?働いてる自分を妨害したいのか。……荷物渡したら帰らせてくれるかな)
「いま忙しい?それほど忙しくは無いんだろ?手持ちぶたさで『特に行きたいわけじゃないけどトイレ行こうかなぁ』って考えてたところだろ、君は」
「滑舌を自慢しに電話したんですね?大丈夫です。誰しも人は輝くモノを心に持っているものですよ。…そんなに必死に特技をアピールしなくとも、銀時兄さんを銀髪天パごと愛して下さる方は居ます。この、宇宙のどこかに」
「お前が俺の何を知ってるんだっ!?俺の運命の人は地球にいねーのかよ!銀河で探さなきゃいねーの?そうなの?この天パが地球てきに駄目なのか?!」
「アンタら店先で何の話をしてんだァ!」
盛大にツッコんできたのは、若々しい『青少年』という言葉が似合う、眼鏡をかけた子。
「新八喜べ!飯が届いたぞーゥゴッ」
ガッ、ズシャアアア…
青少年は銀時兄さんの頭をわし掴むと、地面になすりつけた。
ポカンと驚く光景。
「この馬鹿がすいませんでしたあっ!どうか、警察は勘弁して下さいぃ!!」
青少年は銀時兄さんの頭を地面になすりつけたまま、その横に土下座してきた。
非常に世間体に宜しくない光景が出来上がった。
道行く人たちの視線が痛い!!
(隊服の上に着流し着て来て良かった…しかし、コレが計算だとしたら…いやいや、沖田隊長じゃあるまいし!)
ありそうで怖い!
「青少年くん。君の方が店先で何してるんですか。そのことは大丈夫だから、荷物を運んでいこうか。ね?」
笑顔で優しく言うと、青少年は自分を見て大丈夫だと分かると眩しい笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます!あの僕、万事屋で働いてる志村新八です!!」
「ちょとちょっと、銀さん無しで話進めてんじゃねーよ」
ぬっと立ち直った銀時兄さんが割って入ってきた。
「なんですか。銀さんがこの人に脅しなんて使うから…」
新八君なりに、銀時兄さんが心配で不安だったらしい。ションボリしてしまった。
それを見た銀時兄さんが「うっ!?」とつまっている。予想外だったらしい。
明らかに銀時兄さんが悪い。
だが、小心者の自分にはこの空気を耐えられる訳が無く、口を挟んだ。
「大丈ー夫ですってば。いいかい新八君?自分たちは、そーいうのは『わかる』大人だから。そーいう関係なんですよねぇ。ね、銀時兄さん?」
言ってることは、よく分かんないが、要はこの空気が流れれば良い。新八君は、『銀時兄さん』という単語にちゃんと引っかかってくれた。目を丸くさせている。
「ぎ、銀時、『兄さん』?」
「そうだ、よく言った進後君!さーっ!荷物運ぶぞ、新八」
銀時兄さんは調子よくバイクから荷物を降ろし始めた。
(はぁ。この人は……帰りたい)
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