絡繰-カラクリ-
彼らの名前は
彼女がいることを完全に忘れていた。
「「……あ……」」
はっとして出た声が、ナツキのものと丸被りする。
睨もうとしたが、彼女が話しだす方が早かった。
「あの。私を助けてくれたのは?」
「…あぁ。俺だ」
戸惑いながらも正直に言うと、彼女の顔が一瞬強ばった。
そして、そのまま緊張した声で頭を下げる。
「ありがとうございました」
「…いや、あんなん見て助けねぇ方がおかしいだろ」
「でも、本当に…助かりましたから」
すっ、と顔を上げて彼女がぎこちなく笑った。
―――?
何だか…どうも距離を置かれている感じが、拭えない。
しかも何故か、ナツキもいるのに、俺だけが…。
いや…、初対面だからこんなものなのだろうか?
置かれている妙な距離感を気にしながらも、結局何も言えなかった。
「……名前」
「「え?」」
それまで黙っていたナツキが、ぼそりと呟いた声に、二人で反応する。
「いやね、名前を聞いとかなきゃならねぇかと思いまして。一応、部外者ですし?」
「部外者…」
「………もう少し言い方を考えられねぇのか、てめぇは」
「あ、名を聞くときゃ、まず自分からですかねぇ?」
「いや、そういうことじゃ…」
呆れるシスイを遮って、ナツキは金色の瞳をにこりと細めた。
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