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絡繰-カラクリ-
拾った少女
 

暖かい日差しが縁側を照らす。
少しだけ開いた襖の隙間から、その光は室内に入り込んでいた。

部屋に見えるのは二人の人影。
一人は畳に敷かれた布団の上で、死んだように横たわり、もう一人はその横で、胡坐をかいて座っていた。

静かすぎる部屋の中。
刹那、やさしい襖の音が響いた。

カラリ

「シスイさーん、おはよーございま………」

入ってきて布団を見た途端、硬直する男に、顔を上げて応える。

「あぁ、ナツキか」

「……………」

「何だよ…」

「……みんなァ聞いてくれ〜、シスイさんがオンナ…」

「てめっ…!」

「むぐっ…」

慌てて彼の口を塞ぐ。
今こんなところで騒ぎを起こされたら堪らない。

「黙ってやがれ、ちゃんとサクヤに許可は取ってんだっ」

「え〜、面白いネタになりますぜ?」

「んなもん必要ねぇんだよ」

「ちぇ」

「舌打ちすんじゃねぇ」

ふぅ、とため息をつきながらそう言って、捕らえていたナツキを離す。

「…んで、彼女は?」

何なんです?と含めた疑問を、ナツキが向ける。
少しだけ考えて、シスイは言った。

「…………拾った?」

「……おーい、みんなァ」

「待て待て待て待て、違う、そーいうことじゃねぇ」

「じゃあなに」

「っ…んー、いや、なんつーか……。追われてたのを、助けて…、気絶された?」

「何やったんですか…」

「俺は何もしてねぇよ!」

「ヘー、ソウデスカ」

「信じてねぇな、てめぇ…」


はぁぁ…とシスイは頭を抱えて息をはいた。

一番知られたくなかった相手に知られてしまい、どれだけ強く殴ったら記憶は消せるのだろうかと、シスイは一人、思案をするハメになった。

夏を知らせる蝉の声が、いつにもまして、煩わしかった。





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