絡繰-カラクリ-
響く金属音
男たちが険しい顔で振り替えるのに釣られて、後ろに目をやった。
顔は、月明かりの逆光であまり見えない。
髪は長めで、肩から腰に届くか届かないかぐらいだ。
夏だからだろうか、何故か着物姿で佇んでいた。
「こんな夜中に人攫いたぁ、感心しねぇな」
「………貴様には関係ない。それに、コレはもともと我らの身内だ。…連れて帰るのを、人攫いとは言わないだろう…?」
「へぇ?身内…。……どー見ても嫌がってるように見えるんだが?」
「………何が言いたい?」
「フン、人が嫌がることをしてはいけませんって、母ちゃんに習わなかったのか?」
「…っ?!バカにしてるのか貴様!?」
しゅりんっしゅりんっとたくさんの刀の抜ける音がした。
こんな時代に、刀などを持っていては本来ならば罪となる。
が、彼らは別だ。
法に背く行為を、商売とする集団なのだから。
しかし、それに臆する様子もなく、彼は言う。
「そうさな、少なくとも偉ぇなんざ思っちゃいねぇ。バカにする気にもなれねぇな」
「……っ!もう許さんっ!後悔するんじゃねぇぞ!?」
「…っ!」
駄目だっ、あの人、切られてしまう!
目を見開いて藻掻くが、誰かにがっしりと捕まえられていて思うように動けない。
嫌だ、嫌だ。自分のせいで、誰かが傷つくところはもう見たくない。
藻掻いて藻掻いて、やっと口を塞がれた手だけが外れた。
「死ねぇぇぇぇっ!」
「…っ…やめてぇぇえぇぇ!!」
シュバッ
刀を振り下ろす嫌な音。
ガキィィィン
金属音が、夜の静寂に響いた。
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