絡繰-カラクリ-
責任を負うのは
「……いいんですか?」
「ん?俺ぁ別に構わねぇよ?」
「で、でも…」
「そうですよ、シスイさん。何でわざわざアンタがコイツを匿う必要があるんです?」
渋るアヤカの言葉を遮って、ナツキは言った。
アヤカをまるで邪魔者扱いするような口調に、シスイの眉間にしわがよる。
「あぁ?そんなら何か?お前ぇはコイツを追い出して、また危ねぇ目にあわせろってか?」
「んなこと言ってやしませんぜ。何でシスイさん『だけ』で、アヤカを匿おうとしてるんです?」
珍しく真剣な顔をしたナツキに、シスイは少し間を開けて答えた。
「……万が一ってことがあるだろーが。責任負う奴ぁ一人で十分だ」
ここは、追っ手からは絶対に見つからない。
しかし、アヤカの存在は『ここ』では異例だ。
よく思わない奴だって出てくるだろう。
アヤカがこの場所で行動することの全ての責任は、アヤカを匿う人物に降り掛かる。
そんな意志を込めて言った言葉に、ナツキは数秒固まってから「はぁぁぁ…」と片腕で頭を抱えてため息をついた。
「あのねぃ…だからこそ、アンタの万が一の後にコイツを守る奴が必要なんでしょう?ったく…バカですか」
「………む、そう…か。だが、バカとは何だ、バカとは」
「いやぁ、俺って正直もんですからねぇ」
「斬るぞ…」
「イヤでさ」
ケラケラと笑いながら毒をはくナツキを、シスイは思いっきり睨み付けた。
アヤカはそんな二人を。
罵り合いながらも、何故か暖かく感じるやり取りを。
とてもとても、不思議そうに見つめていた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!