流竜神話
暗い檻の中で
―――暗い、部屋だった。
いや違う。
暗い―――檻だった。
広さは身の丈程。
高さは、正座をすると丁度天井に付くか付かないか。
檻があるのは、同様に狭く薄暗い蔵の様な場所。
―――あぁ、冷たい。
手首の物に触れて、そう思った。
身体が動く度に、じゃらりと鎖の音が鳴る。
両の手首にがっちりと固定された手枷は、何もかもの自由を奪っていた。
冷たい。自分はこんなにも、冷たいものを他に知らない。
掴むと、手枷とぶつかり合って、がちっ…と虚しい金属音を辺りに響かせる錆びれた鉄の格子。
――まるで、ここに閉じ込められているみたい…
―――いや…
内心で呟いて、即座にそれを否定する。
『まるで』ではなく、事実。自分はここに…閉じ込められているのだ。
あるいは、しまわれている、と言うのが正しいだろうか。
逃げ出そうなんて思わない。
だってそうしたら。意味がない。
全部、意味がなくなってしまう。
だって、長が言った。
はじめて役に立てるんだもの。
そう思えば、痛いことも辛くない。
アナタのために。
ただ、アナタだけのために。
ボクは。
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