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桜界逸史
十字の子

その壱

子供を捨てる際には、原則引き取りセンターへ連れていくこと

その弐

引き取りセンター以外に子を捨てる時は体のどこか(常に見えるところに限る)に十字の傷をいれること。*ただし、引き取りセンターが同じ地区にある場合は引き取りセンターに連れていくこと。

その参

子を拾うときには十字の傷がつけられた『十字の子』であるか否かを必ず確認すること。


引き取りセンターは、保健所が名前を変えたものだった。
一定期間育てられると、そのまま『殺処分』だ。

十字の子は、役員によって定期的に回収された。

非道さを訴えた人々もたくさんいたが、お金が無い国には、他にどうしょうもなかった。

もちろんこんなことをしても捨て子が減るわけもなく、結局意味のない十字架を体に刻まれてしまった子どもたちは、ほとんどが捕まえられ、『引き取りセンター』という名の保健所へ連れて行かれることとなったのだ。



志國は、書斎とも呼べる自室でゆっくりと記憶を辿った。

あの日。

あの日は確か、雨が降っていた。





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あきゅろす。
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