桜界逸史
志國と統虎
やってきた統虎の姿は少し、やつれていた。
「作ったついでに、チーム分けもしといたぜ」
「はぁっ!?」
志國の勝手な行動に、摂陸が眉を吊り上げる。
「まぁまぁ、いいチーム編成にしてやったから」
「本当だろうな、嘘なら何かおごれよ」
「上司におごらす気かよ?」
「それが普通だし」
会話が落ち着いたところで、志國がスッと統虎を指差す。
「しかたねぇだろ?なんせ歩月のお偉いさん直々の頼みなんだから」
「おい待て東の。俺は一度もお前のチーム編成に口を出してはいない」
「まぁまぁ、統虎。細かいことは…」
「気にするわっ、こいつらを見てみろ、俺が強制したみたいになっとるだろうっ」
そう、統虎が声を荒げたタイミングに、弥泉と統虎の目が合ったようだ。
弥泉が黙って少しだけ顔を伏せる。
昨日、何も知らずに突っ掛かった事を柄にもなく少しは気にしているのだろう。
統虎はそれに気付いたのか、急にピタリと口を閉じて気まずそうにポリポリと頭をかいた。
統虎が黙ったところで志國が代弁者のように話しだす。
「コイツ、国が気になって仕方ねぇんだよ。ずっと考え込んでるし…、言っても全く、くつろごうとしねぇから俺がここに誘った」
国が気になって
その言葉に、弥泉が俯いたまま、小さく反応する。
統虎は気付いていないようだ。
「……お前なんかに、気を遣わす様な態度をとった覚えは無い」
素っ気なく言い返した統虎に、まぁ、余計なお世話って訳でもないだろ?と志國が言う。
統虎は少し笑って、まあなと返した。
「って事で、悪いけど……コイツの意志汲んで、俺の組んだチームでやってくんね?」
志國が改めて尋ねる。
少し、申し訳なさそうだ。珍しい、と言えば失礼か。
その時。
「……志國さん?」
焦げ茶色の目を少し見開いて、志國を見つめる声が全員の注目を集めた。
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