桜界逸史 噂をすれば 「武器はどうする?個人的なものだけにするか?」 「そうだねぇ、戦車とか戦闘機とかの訓練はいっつも嫌というほどしてるし、今回は陸上選が大のメインだしね」 「やり方も大人数のバージョンで考えなきゃな。俺たち班長組は最後に別枠でやったほうがいいか?」 「一緒にいてもいいんじゃない?どーせ最後まで残るでしょ」 朝食を口にしながらもスムーズに話は進み、一応の構図はまとまった。 海神がまとめるように言う。 「後はチームわけのために、もう一班加えるか。どうする?」 「ん、今日さ。3班も暇……じゃなくって、自主練だよね」 空雉の言葉を聞いて、摂陸が明らかに怯んだ。 「み、弥泉を誘う気か!?」 ダメかい?と空雉は首を傾げる。 「弥泉のとこなら一番受け入れてくれそうじゃない。それに、シュミレーションが目的なんだから、後方支援部とかより主だった班とやった方がいいでしょ?」 「そりゃそうだけどよ…」 空雉の言うことを肯定しながらも、俯いて渋る摂陸に空雉は笑いかけて言った。 「まあそれに?この話を聞いたからには、入ってくるだろうしねぇ、弥泉なら」 えっ、と顔を上げた摂陸の目の前に立っていたのは…。 海神が軽く頭を下げた。 「どうも、弥泉さん」 「うわっ、弥泉!?」 「おっす」 ニッと笑って片手をあげる弥泉がいた。 おいおい、昨日もこんな登場のし方じゃ無かったか!? と、弥泉の噂をすれば影がさすっぷりに、摂陸は心底ビビる。 そんな摂陸に向かって、弥泉がかなり上から目線の、からかい口調で言った。 「海神はいっつもちゃんとしてるのよね、偉いわホント。どっかのバカと違って?」 わざとらしく目を合わせたのはもちろん摂陸だ。 余談だが、弥泉は摂陸、海神、空雉よりも少しだけ年上である。 故に海神は軽めの敬語を使うのだが、実際位は同じなのだからその必要は絶対ではないはずだ。 摂陸は向けられた視線を睨み返して言った。 「おい、俺だけかよ!空雉だって似たようなもんだろ?!」 「いやいや、俺は弥泉を慕ってるからねぇ。ま、愛情表現ってやつ?」 空雉はしれっとして上手く逃げる。 ひとかけらもそんな事を思っていないのは確実だ。 そして、そんなひとかけらも思っていないことを必要だと感じる時に、サラッと言えてしまう空雉に不器用な摂陸が勝てるはずもない。 摂陸はせめてもの抵抗に、あからさまなため息をついた。 弥泉は完全に入る気満々だ。 もうこうなったら何を言っても仕方がない。 「型式はどーすんのよ?」 「一班ずつ総当たり形式でやるつもりだよ」 「いいわ。明日のイメージトレーニングにもなるでしょうし…、私の班も今日は自主練だったから。まぁ、付きやってやらんこともないわね〜」 「うわ、コイツ…」 何様だよ、と続けようとした摂陸は途中で口を噤んだ。 弥泉様に決まってんじゃなーい とか何とか言うに決まっている。 ま、銃撃てりゃ何でもいいか。 諦めた摂陸の横で、よし、けってーい!と弥泉が言って、話はまとまった [*前へ][次へ#] |