桜界逸史
時計台の下で
翌日
空雉が眼を覚ましたのは、まだ薄暗い朝の5時だった。
朝礼は7時から始まるので、まだ2時間ほど時間がある。
んー、散歩でも行くかなぁ。
二度寝しても良かったのだが、それだと起きるときが辛い。
眠気覚ましも兼ねて、適当に基地内を歩き回ることにした。
制服に着替えるのも面倒だったので、ジャージ姿のまま部屋を出る。
寮棟の廊下を進んで、ロビーの前を通った。
この時間帯でも起きている隊員たちは意外に多かった。
基地内の自由に読める新聞を広げていたり、本を読んだりしている。
ふーん、こんな朝の落ち着いた感じは新鮮だね。
なんとなく、『早起きは三文の徳』ということわざに同意しながら、空雉は中庭へと向かった。
「ん?あれは…」
中庭の真ん中に建っている時計台の下に、誰かいる。
人数は2人。
見なれた青光りする黒髪が一人と、知らない顔が一人だ。
片方は海神。
もう片方は、空雉には見覚えのない女子…?
何やら親しげに話をしている。
こんな時間に、知らない女の子と親しげに話すなんて海神らしくないけど…。
あ、笑った。珍しい。
2人は、しばらく話を続けた後、二人して空雉のいる方とは反対側の出口から中庭を後にした。
ふぅん、面白そうだねぇ
完全に、今の女の子は初めに思った客人の箱から移動していた。
その時は2人を追うような野暮な真似はせず、滅多に弱みを見せない海神のオモシロ情報として、しっかりと頭に記憶しておいた。
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