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桜界逸史
突然の召集


いきなり額に入った痛みで、摂陸の言葉は見事に真っ二つになった。

ってぇ…、と額を両手で押さえながら摂陸は机に顔をうずめる。
久々にアレを食らってしまったようだ…。

海神のでこピンの威力には毎回食らうたびに感心する。

いつの間にか席を立ち、摂陸の前に歩み寄った海神は腕を組んで怒鳴った。

「うるさいっっ!ここは基地の中とはいえ、立派な図書館内だぞ、そんなことも分からんのか阿呆!」

…………いやいやいやっ!

どう考えてもうるさいと注意する奴のボリュームじゃねぇだろ、それ!

内心で突っ込んだが、口では言わないつもりだ。
俺だって、こんなとこで地雷を踏むほど馬鹿じゃない……はずだった。

「まったく…、何でいつもお前は人に迷惑ばかり…」

しつこく愚痴る海神に、摂陸は小声で反論する。

「……海神だって、昨日集合時間に遅れたくせに」

思いもよらないところをつかれ、海神は思わず、はぁ?と呆れた声を上げた。

「アレは、ちゃんと事前に志國さんに報告してあっただろう、お前とは違う」

『お前とは違う』という言葉に、摂陸はピクリと眉を動かした。

「遅刻は遅刻だっつーの!今の注意もお前の方が声出してたし!」

「……またガキくさい言い返しをしてきたものだな」

「ガキ言うな!」

「もういい、黙ってさっさと仕上げろって」

「あーっ!俺の正当な意見は丸無視かよっ!?」

「どこが正当だ。そもそも、お前が正当だなんて、一億年早い」

「いっ…一億ぅ!?もうちょい早くてもいいだろー!?」

「はぁ、ちょっと二人とも…」

空雉が止めに入ろうとした、その時だった。

ピンポンパンポーン

途端にさっきまでの嵐が嘘のように静まり返る。

この音は、放送のスイッチが入った音だ。
放送は隊の中で、志國の話よりも聞き逃してはならないものである。

放送の前後に入る特有の機械音に、班長である摂陸たちが人並み以上に敏感なのはごくごく当たり前のことであった。

シーン…と不気味なほど静かになった図書館内に、感情の無い声が響き渡る。


『召集命令、召集命令。1班班長、時雨海神。2班班長、市松摂陸。4班班長、樹谷空雉。以上3名。至急、三号館二階、会議室へ集合して下さい。繰り返します…』

招集場所が放送された時点で既に、摂陸たち三人の姿は図書室からは跡形もなく消え去っていた。





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あきゅろす。
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