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★いまの話し。★
☆ 変わらない
翔ちゃんの運転は
上手い。
心地良い揺れが
穏やかな天気と
すごくよく合う。

『奈央も運転する?』
『翔ちゃんに任せる!』
『俺もそう思う。』

車は
前へ前へ進んでいく。

景色は進んで
私達を確実に
運ぶ。

海にはお昼過ぎに
到着した。
想像して海より
はるかにおっかない。

激しく波打って
まるで
岩場を叩いているようで

正直 どうして
こんなに寂しい景色を
久しぶりに会う
『彼女』に
見せたかったのか
分からなかった。

『どうせ
汚ないとか
思ったんだろ〜?』

翔ちゃんは
にやけながら
車の窓を少し開けて
煙草を吸う。

『…ちょっとね』
私もにやけながら
ポッキーを食べる。

『冬の海,
俺好きなんだ。
しんどいことあってもさ
海って変わんないんだ。

他の人がどう言うか
知らないけどさ。
俺は
海は毎日変わらないと
思ってるよ。
世界一おめでたいことや
世界一不幸なことが
起きても
毎日こんな風に
波打ってさ。
たとえ
世界中の
誰も見てなくたって
波打ってんだな。

俺,
仕事してから
だいぶ変わったと思う。
奈央は
実花を亡くして
寂しい時期だったのに
俺は仕事して
仕事覚えるのに必死で
誰も見てなくても
周り気にして
ピリピリしてた。


大学行ってないじゃん?
だから正直
学生の奈央羨ましかったし
遊びたかったし。

何か
大人になってさ
一人でまともな生活を
送れるように
なってさ

奈央,俺
つまんない人間に
なったよ。

海見るとなぜか
自覚する。

自覚する度へこむけど
自覚できる俺
まだいるんだって
少し安心するんだ。

クソ変なやつでしょ?』

笑いながら翔ちゃんは
言ってたけど

翔ちゃんは
会う度 痩せて
大人の顔になってった。




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あきゅろす。
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