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7日間





放課後。



結局、流川に先を越されたくなかった桜木はずっと棗の近くに居座り、最後のHRで鞄を取りにクラスに戻った。




隣の流川も熟睡していることで棗はやれやれと溜息を漏らし、マネージャーの件についていろいろ考えていることにした。






陵南との練習試合を控えて気合十分の彼らの手伝いをしっかりこなせるのだろうかと思ったり、

でも桜木の様子を見れるようなると思うとこれはいい話ではないのかと考えつく。


それにマネージャーも苦労しているし人助けとして受けるのも考えられる。







……なんて頭の中で試行錯誤しているとも束の間。








「彩子さん、連れて来ましたよ!」

「……」

「アンタたち……」





彩子の目に映るのはきょとんとさせて辺りを見渡す棗と、睨み合っているバスケ部問題児。




学校終了の予鈴が鳴り、左右の腕はそれぞれ鬼のような形相で飛び込んできた桜木と、いつもならまだ寝ているはずの流川に掴まれてしまった棗。


連れて行くのは自分だと主張を繰り返す2人に挟まれた棗はそのまま体育館に連行されてしまった。





既に来ていた部員たちは彼女が気の毒に思えてならない。





『あ、あのさ2人共、腕痛いから離してくれない?
(視線も痛いし)』





棗の言葉に2人はパッと手を離し、未だにいがみ合っている2人を横目に彩子や木暮たちに手招きをされて避難する。





「大丈夫だった?」


『あ、はい何とか』


「あの2人が迷惑かけたみたいでごめんね。
あなた確か桜木花道とよくいる……」


『由利棗、桜木の保護者のようなものです』


「保護者……大変ね。流川は?」


『流川はクラスメイトで、席が隣同士なんです』


「なるほど……(それでか)」





顎に手を当てて考えながら喧嘩をしている2人を眺め、面白そうな顔を浮かべる彩子。



そんなことなど露知らず、棗は赤木と木暮と問題児2人から聞いたマネージャーの件について話を伺っていた。

2人の話よりもやはり分かりやすく、なるほどと相槌を打った。





「候補がいるって桜木と流川が言った時に君の名前が同時に上がって驚いたけど、君なら任せられそうだね」


『そうですか?』


「君のことは上級生の間でも有名なんだよ」


『し、知らなかったです』





文武両道の文字が似合う棗の存在は広く知られており、剣道の実力なども含めて一目置かれていた。

当然自分のことに関して無頓着な本人は木暮の言葉に初めて知ったと目を丸くさせて驚愕。





「赤木先輩、どうですか?」





彩子の言葉に木暮や棗、他の部員たちや喧嘩を止めた桜木と流川の視線が赤木に向く。

黙っていた赤木は棗を見下ろした。





「由利と言ったか。
仕事は大変だ、生半可な気持ちじゃ続かんからな」





棗は赤木の脅しとも取れる言葉に苦笑し、桜木は目を三角にして睨む。





「この天才が認める棗が半端な奴なわけねぇだろうが、ゴリラ!」


『コラ桜木、先輩に対して失礼でしょ』





本来なら赤木の拳が頭に落ちるはずだが、それよりも早く棗の鋭いチョップが腹に入る。



彩子はますます気に入ったのか赤木に向けて彼女なら適任だろうと目配せをする。




流れ的に許可が下りたことになるが、肝心の棗の返答を聞いていなかった。





「棗、勿論やるよな?」


『うーん。
赤木さんが言ったようにバスケ部の仕事は大変そうだし、それに私1人暮らしだから家のこともあるし』


「あ、そうだった…」






棗の父親は幼いころに他界し、母親は海外へ単身赴任して日本にはいない。


1人暮らしということで赤木は大丈夫なのかと心配になったが、紡がれる言葉に耳を傾けた。





『でも桜木や流川が推薦してくれたわけだし、こんなに嬉しいことはないよ』






ありがとうと笑って礼を言えば桜木は当然だと鼻を高くさせ、流川は小さく頷くだけ。





『私のマネージャー期間はその陵南との練習試合日まで。

それから後はおちおち考えるということで如何でしょうか、赤木さん?』


「赤木」


「どうなんだ、ゴリ」


「……良いだろう。
では一週間後の陵南との練習試合の日まで頼んだぞ、由利」


『はい、よろしくお願いします。
使えないようだったらスッパリ切っちゃってくださいね!』


「い、いや……」





悪気もなくあっさりと言いのけてしまう新マネージャーに赤木は調子を狂わされた。


まさか使えないなら切ってしまえだなんて本人の口から聞かされるとは思いもしなかっただろう。




周りの部員も棗がマネージャーを努めることを大いに気に入り、

何よりあの桜木を押さえられる人間が赤木以外で現れたとなると内心胸を撫で下ろした。





彩子に挨拶をする棗に、桜木はやはりこの天才の目に狂いはなかったと胸を張り、彩子は嬉しそうに肩を叩く。

どうやらすっかり気に入られたらしい。





『桜木が加わると彩子先輩も大変ですよね、やっぱり』


「コラ、この天才が加わって大変だとはどういう意味だ!」





集合がかけられ、赤木の簡単な説明をされてから棗は頭を下げて部員に挨拶をする。







期間限定マネージャー


(じゃあ服貸してあげるからこっち来て!
ついでにやること一通り説明するわ!)

(お願いします、彩子先輩)

(彩子の奴、相当気に入ったみたいだな)

(流石天才、だぁははは!!)

(…どあほう)




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