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両手に厄介者






「マネージャー?」


「そう。
最近あたし1人じゃ大変だから新しいマネージャー欲しいと思ってるんだけどさ!」





県ベスト4の陵南高校との練習を控える中、

彩子はここ最近の仕事が少し大変だということを赤木に相談してみた。





「確かに大変そうだね、今。
(桜木とか、桜木とか)」


「そうか、新しいマネージャーか。
(桜木が入ってから仕事量が増えたからな)」





木暮が伏せたようで伏せ切れていない言葉は赤木も同じだった。


――すると。





「新しいマネージャーならいますよ!」





レイアップを決められるようになって上機嫌の桜木は、話を聞いていたのか堂々と挙手をしてズンズンと話に割り込む。


あまりの自信ありげな顔に赤木はとりあえず聞いてみた。





「適任なのか」


「この天才に狂いはない!」


「アンタがそこまで薦めるなら是非連れて来てよ、桜木花道!」


「任せてください!」





桜木は高らかに腰に手を当てて大声で笑った。





すると。







「ん、どうした流川?」

「……」






木暮は流川の何か言いたげな視線を感じた。





「何よ流川ー?
もしかしてアンタもマネの宛でもあるの?」





彩子は女子に興味を全く示さない流川をからかいながら肘でつつく。

桜木もハンと鼻で笑い飛ばしていた。


だが流川は視線をそらし、






「……1人」






素朴に返された言葉は彩子や桜木だけでなく、赤木たちを驚愕させた。


どれだけ女子がうるさいくらいに騒いでも興味なしの流川に、マネージャー候補の宛があることにショックを隠し切れなかった。





「で、アンタたちの言う候補者の名前は?」





彩子は興味津々に食らいついた。


満面の笑みを見せる桜木と無表情の流川の言葉が発せられたのは同時だった。






「「由利棗」」






――





棗は困り果ててしまった。


本来なら登校すると日に日に増えていく写真を眺めながら愛用のカメラの手入れをする。




しかし、現在は自分の視界を覆い尽くす壁――それも手入れなど出来るような余裕を与えない凄まじいオーラを漂わせるものが2つ。

大きさは同じにしても、赤い髪と黒い髪が並べば教室中の視線を集めるの言うまでもない。





『あ、あの……おはよう、2人共』





漸く発せられた言葉は挨拶だけ。

だがそれを聞くと目の前の桜木は満面の笑みで「よぉ」、彼の隣の流川は「っす」と返す。


一瞬隙が出来たかと思いきや2人は直ぐに殺気を互いにぶつけ、先程と同じ空気に戻ってしまった。






『えーっと、どうかしたの2人共?』


「実はな……って、どけ流川!
この天才の誘いを邪魔するんじゃねぇ!」


「うるさい邪魔するな、どあほう」


「んだとコラ!」





本題にも入れず喧嘩を始められてしまえば、棗は本気で水戸たちに助けを求めたくなった。


ついに我慢できなかったのかここは言ったもん勝ちだと2人は口を開き、その言葉は見事に揃って棗の耳に入った。







「「マネージャーやってくれ(!)」」







突然の言葉に一瞬何が何だか分からずに脳内をショートさせていると、桜木を探しに来てくれたのか水戸たちがやって教室に入って来た。





「あーあ、派手にやってるな」


『み、水戸! 一体この2人どうしちゃったの?』


「俺たちもよく知らねぇんだが……(なるほど)」






落ち着いた2人の話によると彼らは棗にバスケ部のマネージャーを頼みに来たらしく、

お互い同じ相手だったということで先に勧誘しようとして現在に至る。




話の主旨が分かった棗はせっかく来てくれたのだから詳しく話を聞こうとしたが、予鈴が鳴ったことでまた後でということになった。






強烈勧誘


(由利……)

(実はな棗、彩子さんが……)

(コラ桜木ぃぃぃ!
お前は自分のクラスにさっさと戻れぇぇぇ!!)



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あきゅろす。
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