短編
9
突然教室に現れた葉山という男に、俺は腕を引かれている。
離されたのは屋上に着いてからだった。
何故屋上?
俺を連れてきた人物に目をやると、そいつ、葉山は俯いていた。
「葉山?」
どうしたのかと、覗き込む。
見えた表情は辛そうだった。
「――よ…」
「え?」
葉山が何かを呟いたが、聞こえず俺は聞き返した。
「名前で呼んでくれよ!!今までみたいに幸咲って、呼んでくれよ…」
切羽詰まったように、叫んだ葉山。
「こうさく?」
「…っ」
葉山の言った通りに名前を呼ぶと、傷ついたような表情をした。
「建斗っ…」
自分が呼ばれたと同時に、抱きしめられる。
何となく、懐かしいような気がした。
「こうさく?」
「ごめんっ…本当ごめん…ッッ…」
そして、何故か謝ってくる。
「お、おい」
俺は戸惑った。
どうして謝ってくるのだろうか。
俺にはわからなかった。
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