短編
8
屋上につき、建斗の腕を離す。
「葉山?」
俯く俺を心配そうに名を呼びながら覗きこむ建斗。
「呼べよ…」
「え?」
「名前で呼んでくれよ!!今までみたいに幸咲って…」
呼んでくれよ…
「こうさく?」
「…っ」
ちげぇ、違うんだよ。
ただひらがなを読んでいるような呼び方に、胸が苦しくなって、
今目の前にいる建斗が俺の知る建斗じゃないみたいで、急に怖くなった。
「建斗っ…」
俺は建斗を抱きしめる。
「こうさく?」
「ごめんっ…本当ごめん…ッッ…」
「お、おい」
何度でも謝るから。
浮気なんてもう絶対にしないから。
戸惑う建斗に構わず、俺は謝り続けた。
「戻ってこいよっ…」
気づいたら俺は泣いていた。
「前みたいに幸咲って呼んでくれよ…建斗ッ…」
「えっ?」
建斗が一瞬震えた。
俺が怖いのか?
「好きだ、建斗だけを愛してるっ」
建斗に伝わるように、優しく抱きしめた。
それでも建斗は反応しなかった。
「建斗ごめんッ。もう浮気なんかしねぇから……」
葉山SIDE終
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