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お題&企画
程々にしましょう



※レイ→ユリ♀←シュヴァ





「ユーリ」

「ユーリ」

「……」

同じ声に、同じ顔。
違うのは、服装と髪型くらいか。
声を出すタイミングでさえ完全一致していた。
本来ならば、こんな現象有り得ない。
だって目の前にいるこの二人は、全く違わない…つまり同一人物なのだから。

「…こりゃどう言う…」

驚きでロクな反応さえ出来なかった。
同一人物であるレイヴンとシュヴァーンがそれぞれ別々になって喋っている。
何かのイタズラかとも思ったが、よく見れば顔は全く同じ声も同様に、この二人が決して偽造では無いことを物語っていた。

みんなの頼れる兄貴であるユーリはある疑問に頭を抱えた。
――どちらが本物なのだろうか。
普通に考えれば胡散臭い方を選ぶに決まっている。
しかし実際シュヴァーンがここにいるわけであって、彼のことも到底偽物だとは思い難い。
だがそうなれば…ああ、意味がわかんなくなってきた。

「おっさん、どっちが本物?」

面倒だからと直接訊いたのが間違いだったのかもしれない。
レイヴンとシュヴァーンが顔を見合わせた。
こんな光景恐らくは二度と見られないだろうが、ユーリにとってはどうでもいいことだ。

「「俺」」

「あ―…」

もうどっちでもいい。
いいから一発殴らせろ。








「…れ、レイヴンが二人!?」

彼の現象に対する仲間達の反応は様々なものだったが、なかでもカロルは驚きを隠せない様子だ。
思わず両方を見比べてしまうが、どちらも偽物とは言い難い。

「…私、どちらも本物に見えます」

「いや〜おっさんも起きたら変なのいるし吃驚したんだけどね」

「…変なのとはどういうことだ。斬られたいか」

「ちょっと、おっさん同士で喧嘩しないでちょうだいよ。鬱陶しい」

しかし同一人物の筈なのに何故か気が合わない二人は、互いに睨み合っている。
リタが小さく吐き捨てたところで二人の会話こそ終わってしまったものの、両者はまだ睨み合った儘だった。

「まあ二人共落ち着いて。二人は同一人物なのだし、焦らず今後のことを決めましょ?」

それにこれなら戦闘に困ることはないわ。

ジュディスの言葉に一同は目を瞬いた。
そう言われればそうだ。
シュヴァーンとレイヴンの両方が揃うことで前衛と後衛、どちらも確保できたのだ。
ただしレイヴンが面倒くさがって戦闘に参加しない可能性もある。

「ええ―、おっさん疲れるの勘弁!年寄りは労ってよね!」

「俺は、出来ることであれば何でもしよう。」

「…うっわ、本当性格全然違うよね」

何だかんだ言ってシュヴァーンは頼りになりそうだ。
そう考えると同時に、予想通り戦闘に参加したくないと駄々をこね始めたレイヴンへと冷たい視線を送った。

シュヴァーンは仕事モードであるがレイヴンはプライベートモード全開である。
それにレイヴンの姿では真面目にやってるんだかやってないんだか見当のつかないことが多い。
しかしどっちかと言えば不真面目なことが多いような気がする。

「…シュヴァーンは騎士団の隊長だから真面目にやるんだろうけど、心の中では面倒くさいと思ってるのかなあ」

「さぁな」


大人ってみんなこうなのかな。
小さく呟いたカロルに少々同情するユーリであった。









「で、今日の戦闘メンバーの件についてだが」

「折角おっさんが増えたんだから使ってやればいいじゃない。胡散臭い方も一緒に」


人数が増えたことでの、戦闘における作戦会議は必須だ。
気ままに道を進むにしても目標というものは一応存在するので、のんびり過ごしすぎるわけにも行かないのだ。

やっと話を切り出せたところで天才魔導少女がやる気のない声で提案した。
つまりは、レイヴンとシュヴァーン両方を戦闘メンバーに加えろということらしい。
シュヴァーンは十分戦力になるし、レイヴンも普段戦闘メンバーから外れて戦闘中に睡魔と戦っているくらいだから丁度いい機会なのかもしれない。

「じゃあおっさん二人は参加決定な。あとは誰が入る?」

ユーリが仲間に視線を巡らせた所で小さくて手があがった。
天然女王のエステルである。

「…あの、ユーリはいつも戦闘で疲れてると思うので今日は違う人が戦闘に参加した方がいいと思います」

「それもそうね。では私が参加するわ」


エステルの提案と、それに続くジュディスの賛成にユーリはやれやれと溜息を吐く。
戦闘は疲れるどころか楽しいのだが。
そう思うも自分のことを考えてくれた二人に、口出しすることは出来なかった。
しかし、レイヴンは不満気な表情をありありと浮かべ始める。


「え―何でよ!ユーリちゃんと一緒がいい!」

「アンタねえ…」

リタが呆れたようにレイヴンを見る。
しかし気にする様子もなく、言葉を続けた。

「戦闘中に揺れるユーリの胸を間近で見れないなんて、拷問だ!」

「ちょ、おっさん何言って…!」

「あと、風に揺れるユーリのさらさらな髪の毛とかちらちら見える白いうなじとか」

「アンタ…せ、セクハラよ!!恥を知れ!!」

リタがレイヴンをセクハラ呼ばわりしたが、相当ユーリと一緒に戦闘したいのか言葉が止まる気配は無かった。
それどころか行動は更にエスカレートしていく。

「戦闘中に限らず、ユーリのこの小さいお尻が」

「…ぅおっ!?」

ユーリは尻に変な感触を感じて女性らしからぬ悲鳴をあげた。
思わず背後を見やると尻を誰かの手が撫でていた。
手から腕へと視線を辿ると見慣れた紫色の羽織り。
やはりレイヴンだった。

「ああああアンタ触ってんじゃ、ないわよ…っ!」

「だってえ」

見るに堪えない。
今まで黙っていたジュディスや放心していたエステルは遂に武器を構えた。
どす黒いオーラが恐ろしい。

「貴様止めないと斬るぞ」

しかしシュヴァーンの制止によってレイヴンの動きが一度停止する。
そして再び睨み合いに発展するが、両者とも一歩も引かない。

「あん?なによ。俺如きが俺様に指図しないでよね」

「そういう貴様こそ、元隊長が聞いて呆れるな。…ユーリの処女は俺のものだ」

「…何言ってるのよ。ユーリをあんあん喘がせるのは俺様だっての」

「よーし二人共俺に殺されたいらしいな」












結局その日は全く目的地にも到着せず、昨晩と同じ街で寝泊まりをすることになった。
散々セクハラを受けたユーリが二人を沈めて随分と時間が経っている。
だが中々姿を表さないレイヴンとシュヴァーンに疑問を抱き、カロルはユーリに二人の行方を訊ねることにした。

「…あのさ、あの二人は?」

「ああ、おっさん達か?取り敢えず痛めつけて二人の部屋に放り込んどいた。」

――リタ達もおっさん達んとこに行ってたみたいだから、今はどうだか知らないけどな。

何もないように話すユーリに血の気が引いていくのを感じてこの会話を終わらせようと短く返事を返した。

「…へ、へ―え」





翌日街のゴミ捨て場で一人のおっさんが血塗れになって発見されたらしい。
話を聞く限りではシュヴァーンは居なくなっていたらしいが女性陣を、しかも特にユーリに関することでは絶対に怒らせてはいけないと心に誓ったカロルであった。






end

十万打お礼フリリク「レイヴン→ユーリ♀←シュヴァーン」でした^^
セクハラされまくるユーリとのことでしたが、セクハラ薄いですね(汗
しかもにょたの表現が無さすぎたorz
こんなものですが、楽しんで下されば^^
リクエストありがとうございました!

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