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雪に咲く花
ページ:4
彼とその恋人をのせたバスが事故を起こしてしまい、二人は病院に搬送された。
幸い、彼の方は軽傷だったが、恋人の方は意識不明の重体だ。
しかも、彼は上京してからの記憶を失ってしまったのである。
当然、恋人のことなど覚えているはずもない。
その事を知った主人公の心に魔がさし、自分が彼の恋人であると偽り近づいた。
大学時代からの記憶のない彼は、昔馴染みの彼女に安心感を覚え、気持ちを受け入れるのだ。

「何これ?今の俺みたいじゃん」
小説のヒロインは正に自分の心情にそっくりなのだ。
続きを最後まで読むのをためらってしまう。
「どうせ幼なじみの記憶が戻って失恋する話なんだろ?明日返しちゃおう」
何とか亘から雪斗を遠ざけたが、いつか記憶を取り戻して離れていってしまうのが不安になる。
小説のラストを読めば、それが決定づけられるようで怖いのだ。

翌日、悠希は三浦に読みかけの小説を返した。
「どうだった?この小説」
三浦が質問する。
「主人公があんまり可哀想で読むのが辛かったです」
「そうか。でも、僕はこの主人公に惹かれるな。不器用だけど一途で、どこかほっとけなくてさ」
この時、三浦の言葉に、不思議と何か温かいものを感じた。


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