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雪に咲く花
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「弟が15歳の時に、突然、車に跳ねられて死んだ。写生しているときに、風に吹き飛ばされた絵を拾おうと道路に飛びこんだらしいんだ」
「そんな……まだ15歳なのに……」
まだ、これから色々なことが出来たはずなのに、なんと悲しい運命なのだろうか。
「僕が今の会社に入ったのは、弟の絵を世の中に残したかったからなんだ」
「弟さんの絵を?……」
「そうだ。弟の絵をCGを使って加工したものが世間で使われたらいいと思ってるんだ。兄として弟の生きていた証を残したくてね。広報部は、他社の広告のグラフィック画像を企画する注文を受けている仕事があるんだ。そこで弟のイラストをもとにデザインしたものが、いつか使われればいいと思っている」
無表情の黒崎の裏側には亡き弟への思いが潜んでいたのだ。
「弟さんのイラスト、いつか使ってもらえるといいですね。いや、きっと使ってくれると思う。あんなに、素敵なイラストなんだもん」
「有り難う。君も今は辛いかも知れないけど、出来ることをひとつづつ、やっていくしかないんだ。まだ、全てを失ったわけじゃないんだから」
「昨日までは、そう思ってたんだけど、あんなこと言われたら……」
雪斗は、亘に投げ掛けられた言葉を思い出す。

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あきゅろす。
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