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雪に咲く花
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「問題って、いったい?……」
「父親の記憶は頭の中から消えたけど、恐怖だけは体の中に残っていたんだ。君になら分かると思うが……」
彼の言う通り、体の中に刻み込まれた恐怖が、簡単に消えることのないのは知っている。
頭では忘れたつもりでも、男性にむやみに触られたりすると、途端に過去の恐怖がよみがえってくることがあるのだ。
「さっきも話したが、弟は記憶はないはずのに、怒鳴り声を耳にしたり、暴力を目の当たりにすると、体が震え出して過呼吸を起こすようになったんだ」
「それって、きっかけは違うけど俺と同じ症状ってことですよね?」
他人事とは思えなくなり、気になってくる。
話によると、彼の弟は雪斗と同じくらいの年らしい。
あの時、雪斗と黒崎の弟が被ると言ったのは、そういった共通点があるのだろうか?
「そんな訳で、幼い頃、素直で明るかった弟は、友達もなかなか出来ず、自分の殻に籠るようになっていったんだ。そんな弟にとって唯一の楽しみは絵を描くことだった」
複雑な事情を抱え、友達もいない弟は、この世を去るまで絵を描き続けていたと言う。


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あきゅろす。
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