http://mbbook.jp/19730125/
雪に咲く花 ページ:1 亘が、雪斗との記憶をなくしてから、1ヶ月以上もたとうとしていた。 9月の終わりに入り、颯人は、あと数日で警察学校の入校式を迎えるのだ。 月末の日曜日には、颯人の送別会を施設でやる予定になっている。 颯人は、今度こそ、施設から去らなければいけない。 雪斗や亘も送別会に呼ばれている。 しかも、颯人の提案で、いつかのクリスマスパーティーのように、演劇をして欲しいということなのだ。 「何これ?変な衣装だな」 「まあ、人魚姫なんだから我慢してくれよ」 「やだなあ。こんな役ばかり」 雪斗はグレーのウロコ柄の入った脚全体が隠れるロングスカートとクリーム色の無地のTシャツ、亘は王子様の格好だ。 「ずるいな。相変わらず、亘は美味しいとこどりなんだからな」 着替えている時に、亘と二人きりになり、記憶がないことも忘れ、思わず話しかけていた。 「えっ!前にも何かやったのかい?」 「あっ!そうか……覚えてないんだった。あの時、亘はサンタクロースの役をやったんだよ。俺はあの時もお姫様で颯人は悪魔の役だったんだ」 「そんなことあったのか?じゃあ、こんなことするのは初めてじゃないということになるな」 亘が不思議に思いながら、雪斗の方を向いた途端に笑い出した。 [次へ#] [戻る] |