http://mbbook.jp/19730125/
雪に咲く花 ページ:10 亘は、再び椅子に座り、悠希に言った。 「君にはがっかりしたよ。壊してしまったものはどうにもならないけど、どうして正直に話してくれなかったんだい?ゴミ箱に捨てることはないだろ」 悠希は無言で、うつむいている。 「あのフォトフレームはね、俺達にとってはかけがえのない宝物なんだよ。雪斗があれだけ怒るのも無理はない。あれについているオルゴールはね、雪斗が苦しい思いをしたときに心を救ってくれたものなんだ」 悠希は何も言えないままだ。 「正直言って俺だって君を許せない。大切なものを壊してしまったうえに、それを隠そうとしたことがね」 「ごめんなさい。同じものを探して弁償します」 ようやく、悠希が口を開いた。 「そういう問題じゃないんだ。あのフォトフレームはたったひとつしかない思い入れのあるものなんだ。代わりなんてないんだよ」 「僕にだって大切な人は一人しかいないんだ」 悠希が涙ぐみ亘を見つめる。 「えっ!?何を言って……」 「フォトフレームはわざと壊したんだ」 「何だって!?どうしてそんなこと」 まさかの言葉が、亘には理解できない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |