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雪に咲く花
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「あいつさえいなければ……」
悠希の心に悔しさが沸き上がる。
子供の頃から、両親にも兄弟にもないがしろにされてきた。
エリート家族に育ち、二人の兄は優秀なだけでなく、社交的な性格であった。
それに対して、自分は兄達に比べると成績もそれほどではなく、内気で口下手だ。
そんな悠希に家族たちは冷たかったのだ。

『悠希だけは私達の遺伝子を引き継がなかったようだな。国語の成績はいいが、他には何も取り柄がない。ろくに話も出来ないしな』
『あの子だけは何を考えているのか分からないわ』
『あいつ、トロイよな。本当に俺たちの弟か?』

ずっと投げ掛けられてきた家族の言葉が頭にこだまする。
「やめろ!やめろ!やめろぉぉっ!」
声をかき消すように叫び続けた。
「悠希君、どうした?急に」
驚いた亘が悠希の顔を見る。
「あっ!ごめんなさい。なんでもないから気にしないで」
「そうか?大丈夫ならいいんだが」
亘が入浴をするために浴室に向かった。
部屋の中にある小さな棚に、雪斗と亘が二人で笑っているフォトフレームが置いてあるのが目に入った。


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あきゅろす。
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