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雪に咲く花
ページ:9
息子は厳格な父親の存在も、優等生でいることも、苦痛でたまらなかった。
遺書とともに、息子が描いていた絵が何枚も発見されたのだ。
彼は、勉強よりなりより絵を描くことが好きであり、将来は絵の道に進みたいと思っていた。
しかし、成績重視の厳格な考えを持つ父親がそんなことを許すはずがない。
父親と自分の理想が噛み合わず、更に父親のことでいじめを受け追い込まれていたことなど想像出来なかった。
たった一人の息子を失って初めて養父は彼の本心を知り、愛情のかけ方を間違っていたことに気づいたのだ。
「助けを求めていた息子に、私は何も知らず、ただ甘えている根性なしだと罵るだけだった。最終的に息子を追い詰めて殺したのは私なんだ」
養父の涙に滲む目が、眼鏡の奥に隠れている。
「貴方だけが悪いんではありません。私の方が近くにいたのに何も気付いてあげられなかった」
養母がハンカチを取り出し涙を拭う。
「重い話をしてすまなかったね。しかし、亘と付き合うからには、ありのままを知ってもらいたかったんだよ」
「いえ、僕にも息子さんのこと他人事のように思えないので……」
雪斗は、養父の悲しい過去の話に心が傷んだ。


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あきゅろす。
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