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雪に咲く花
ﾍﾟｰｼﾞ:2
母は、不倫相手の妻を殺したという。
耳を塞ぎたくなるような、衝撃的な事実を聞いたとき、何もかも信じることが出来なくなった。
怒りと悲しみのあまり部屋にこもると、物を投げつけ大声で泣き喚いた。
「お母さんの嘘つきっ！大嫌いだ！誕生日祝ってくれるって約束したのに……」
その時から、体中の涙がなくなったかのように、亘は感情を出さなくなったのだ。
施設の職員達も、手がかからないながらも、誰にも心を開こうとしないことに心配をしていた。
しかし、そんな亘を引き取りたいと言う夫婦が現れたのだ。
「あの子は、複雑な事情を抱えているし、感情を失った子なんですが……」
施設の職員は、亘の母親の事件のこと、そのために心を閉ざしてしまったことなどを話して聞かせた。
それでも、彼らは、他の子供ではなく、あの子がいいのだと言いはったのだ。
夫婦には自殺した一人息子がいたが、彼の死の直前の瞳が亘とそっくりだと言う。
亘を引きとって、もう一度子育てをやり直したい。
そんな、夫婦の熱意が伝わり、亘は引き取られることになったのだ。
最も、亘としては、集団生活を強いられる施設より、まだましだと思って養子になることをすんなり承諾したわけだが……。
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