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雪に咲く花
ページ:9
「お前、お母さん好きだったんだな」
突然の普段無愛想な亘の言葉に驚きながらも、颯人は怒鳴り声をあげた。
「あたり前だろ。母ちゃんなんだぞ。俺の母ちゃんは怒ると怖いけど、でも優しくて美味しいご飯作ってくれて、いろんな話してくれて、それから……」
喋りながらだんだん涙声になり思いきり泣き出していた。
亘は何も言わず、黙ってそばにいた。
弱みをみせたくなくて涙をこらえていた颯人だったが、不思議と亘の存在が心を軽くしていたのだ。
「お前は幸せなんだな」
ふと亘が言った。
「何が幸せなんだよ?俺はもう母ちゃんに会えないんだぞ!」
「お母さんのいいところばかり思い出しているじゃないか。羨ましいよ。これ、使えよ」
突っかかる颯人に、亘がタオル生地のハンカチを数枚差し出した。
施設にきて初めて、人に弱みを見せたのは亘だったのだ。
兄弟がいない颯人にとって、いつもは無愛想な亘に、兄のような温もりを感じていたのかも知れない。

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あきゅろす。
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