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小ネタ
たまにはね。(学パロ就+蘭)
降水確率50%の時、傘を持って出かけるかは人によって意見が分かれる微妙な境目である。
蘭丸の場合、特に心配性というわけでもないのだが、最近濃姫に新しい傘を買ってもらったことがよほど嬉しいらしく、少しでも雨の予感がすると学校へ持って行って帰りに使えるくらいには降っていることを期待する。
昼休みにはすでに灰色の雲が空を覆い、明るい日差しを遮っていた。
放課後になってもそのまま天気は下り坂で、蘭丸は弾んだ様子で昇降口に向かった。
靴を履き替え、いざ新品の傘を手に取り留めボタンを外したところで珍しい光景が視界に飛び込んだ。
 
毛利元就。
 
常に毅然とした態度で校内に君臨する彼が、玄関先で膝を抱えてうずくまっている。
蘭丸が見ている斜め後方からでは色素の薄い柔らかな髪が遮ってその表情をうかがうことは出来ないが、それはどう見ても「落ち込んでいます」といったポーズである。
なかなか見ることのない元就の沈んだ様子に蘭丸はニヤニヤしながら近付いた。
 
「何故だ…何故日輪は我を見放したのだ…」
 
なにやら1人で呟いている。
学年が違うのでふだんから彼を注視してはいないが、蘭丸は時折太陽に向かって大きく両手を広げて幸せそうな顔をしている元就を見かける。
太陽が、好きなのだろう。
蘭丸に言わせれば雨ぐらいで大袈裟な、と思うところだが、元就にとっては天候がその日の機嫌を左右するくらい重要なことなのだ。
大方晴れると信じて傘を忘れたのだろうと蘭丸は彼の隣に立って声をかけた。
 
「雨宿り、意味ないと思うよ」
 
元就は突然横から声がして驚いたように顔を上げた。
 
「…貴様には関係なかろう」
 
「だって珍しいから」
 
「我は見せ物ではない」

 
近寄り難い元就と会話できていることがえらく貴重なことに思えたのか、蘭丸はその場で同じように腰を下ろした。
 
「何をしておる」
 
「傘、入れてあげてもいいけど」
 
「頼んでおらぬ」
 
「そっか、親切な女子が通りかかって相合い傘してくれるの待ってんだ?へぇ〜、意外」
 
「なっ!?誰がそのようなこと!」
 
元就が心外だと言いたげな顔で睨んできたので蘭丸は声を上げて笑った。
 
「傘は奴…長曾我部が持っておる」
 
「元親?なんで?」
 

蘭丸が問うと元就は何ともいえない複雑な顔をした。
焦ったような。
泣きたいような。
常識ある者ならこれ以上深入りしないのだが、そこは好奇心旺盛な蘭丸である。
まあるい瞳を向けられ、根負けしたように元就は溜め息をついた。
 
「昨日は1日雨であったろう」
 
「うん」
 
「あやつは傘も差さずに登校し、挙げ句我の家に寄ると言い出した。仕方なく傘に入れてやったというに帰る時土砂降りの中を走りだそうとしておったから呆れて傘を投げ付けてやったのだ」
 
「あはははっ!それで?」
 
「案の定差した時には既に遅く、奴はずぶ濡れで風邪を引いた……馬鹿は風邪を引かぬというが通り越して唯の阿呆のようだ」
 
元親が傘を借りたまま学校を休んだので元就は雨具を持って来れなかったらしい。
饒舌に語る元就を見て蘭丸はニタリと怪しい笑みを浮かべた。
 
「何がおかしい」
 
「だってさ。文句言ってんのに顔が全然嫌そうじゃないんだもん」
 
「!?……散れっ!!」
 
元就はありったけの力で蘭丸の背に鞄をぶつけた。
後輩だろうと年下だろうと容赦がない。
蘭丸はいちおう痛いと抗議しつつも元就の赤面が面白いので笑顔のままだ。
 
「今日の帰りはどうすんのさ」
 
「止むまで待つ」
 
「だからこんな雲じゃムリだって」
 
どこまでも頑固な元就に苦笑したが、ふと思い付いたように蘭丸は傘を差し出した。
 
「ん」
 
「なんだ」
 
「貸してやるよ」
 
「…貴様はどうする」
 
反射的に手にとってしまった元就は、くるりと校舎の方へ方向転換した蘭丸の背を見やった。
 
「蘭丸もこっちの方が都合いいんだよね。お見舞い行ってあげれば?」
 
1度振り返って手を振る蘭丸。
元就は悔しそうに舌打ちし、その場で傘を広げた。
 
「………」
 
そのまま家と反対方向へ向かう足取りは雨の日らしからぬもの。
一方の蘭丸は口実が出来たとばかりに彼の傘となってくれる人を目指して保健室を訪れたのだった。
 
 
 
 
 
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リハビリ中にて就+蘭。
あくまでCPではありませんよ!
それぞれ想い人がいるということで。
 


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