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Ace of diamond
そんな気分だった(結城哲也)
「涼」







付き合って約3ヶ月。
私はいまだに哲に名前を呼ばれるだけでもドキッとする。
なれないとかじゃないけど、
よくわからないけど、
ドキッと、ね。




「ん?」




「明日、試合なんだが見に来るか?」





時々、試合がある日に私を誘ってくれる
ちょっと優越感があったりする。
野球をしている最中の哲は最高にカッコいいと思う。
しかも、4番でファーストでキャプテンだなんてずるいほど

もちろん、まわりに敵が多いのは言うまでもない。
でも哲は私をいつもかばってくれる。
それがとても嬉しいことで




「もちろん行くよ!!」




「そうか。
じゃあ、頑張らないとな」






本当にずるい。
哲は私の頭をポンポンっと叩くとにっこり笑った。
心臓、破裂しそう



もう満塁打でも打たれた気分だよ。
うん。
痛い子とか思わないでね





















そしてやってきた試合の日。
私は気合を入れてグラウンドへ向かう
真っ白のワンピースに身を包み、お気に入りのサンダルを履いて出かけた


グラウンドに到着するともう試合は始まっていた。
今は5回の裏で1-3と珍しく負けている試合だった






「あ、」






現在、2塁に倉持くんがいて三塁に亮介、
そして純がバッターボックスで吠えている

(チャンスじゃん!)



ピッチャーからボールが放たれる。
そして…








「らっしゃぁぁぁあああぁあ!!!」









カキーン、と痛快な金属音が響き渡ると共に打球はライト前へと落ちる。
純が塁に出たの久しぶりにみたな、と思ってちょっと笑っちゃう。

打順は3番まで来ていた。
次は4番。そう、





哲の打順





私の心臓が跳ねたのがわかった。
満塁のチャンス、哲はちゃんと打つのだろうか。
いや、絶対打つ。哲なら絶対打ってくれる。そう言った安心感があった









ットラーイク!!!







審判の声が響く。



いつの間にかカウントは2-3。
追い込まれている。






なにをらしくないことやっているんだ。
私はそれしか思わなかった

いつもの冷静さを失った哲は私の目には焦っているように見えた





















「哲ー!!!
打てよーーーー!!!!
漢だろぉおぉぉおおーーーーーー」
























…やっちゃった。
叫んじゃった



回りの目が痛い。
そんなことははっきり言ってどうでも良かった。
哲には聞こえただろうか。
打てるのだろうか。







顔を上げて哲を見る。







哲は外野スタンドで叫んだ私に向かってバットを向け、笑みを浮かべている。











ドキンッ










ホームラン予告。
私に向かってホームラン予告をする哲はさっきとは大違いで、
とんでもなく自信に満ちたような顔をしていた









カキ―――――――――ン










本当に、本当に打った。
哲はホームランを打った。



1塁をまわったらへんだろうか
私の顔を見て高く拳を付き上げた。













バクバクバクバク、と私の心臓は本当にうるさい。














そのまま試合は進み、哲の満塁逆転ホームランが決勝点となり青道は勝利を収めた。





試合が終わり、哲の元へ走る。


そこには純や亮介もいた



「やっほ、涼。
すごい叫び方だったねー」


「あぁ、すごかったぞ。
おかげでコイツの目も覚めたみてぇだしなっ」




亮介と純にどやされる。
わかりきっていたことだけどやっぱ恥ずかしいものは恥ずかしい。




「あ、の、それ、はっ…!」





口ごもる私の腕を哲が引く
私はすっぽりと哲の腕の中に納まった。





「別にあれは関係ない。」







(…え)





「じゃぁなんで?」



ニコニコ笑う亮介は怖い。

しかし哲は動じないまま答える











そんな気分だった
(そう言った哲の腕の力がぎゅっと入り、上を見ると少し赤くなっていた。)
(「本当は、涼のおかげ。応援ありがとうな」、なんて耳元で囁かれ本当におかしくなってしまいそう)









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あきゅろす。
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