* 淡く染まる *


「あのっ、香奈ちゃん……放課後なんだけど、一緒に公園に行かない? 話したい事があるんだけど……」

 勇気を振り絞ってかなちゃんを公園デート(呼び出しともいう)に誘った。

 紫陽花の季節がもうすぐ終わる。花も色が移り変わり葉の元気も衰え始めた初夏。

香奈ちゃんに、告白しようと思います。


「なんだか、元気ないね」

「え、そっそうかな」

 道に沿うように植えられた紫陽花を横目に、いつ言い出そうかと俯いてタイミングを伺ってたら、香奈ちゃんに心配されてしまった。
 ――告白のタイミング伺ってました、だなんて言えません。

「うん、なんだか私も少し寂しくなっちゃうな」

「え、え? あ、なんかごめん。元気がないわけじゃなくて、その、いつ告白しようとか悩んでて……あ」

 ――やってしまった。

 瞼を伏せて悲しげな顔をするかなちゃんに、何とも言えない感情が湧いてきて、つい、本当につい、言ってしまった。

「あ、あの、今のは違くて、あ、好きってのは違くはないんだけど、ってさっきそんな事言ってないよ僕っ! ええと、」

 ……ごまかそうとして悪化させてしまった。――あ、涙がでそう。

「あのっ、なんかどさくさに紛れていろいろ言っちゃったけど」

 なんかもう、腹を括ろうと思います。

「好きです。まだ出会ってから何ヶ月も経ってないけど、この気持ちは本物だから……付き合ってくださいっ!」

 僕は、横にいるかなちゃんの方に向き、右手を差し出して頭を下げた。

 ――言った。言ってしまった。どうしよう、これまでにないくらい、心臓がドクンドクン言ってる。しかも、なんか居心地の悪いタイプだし……。

「霧島くーん! 見て見てっ、こっちの紫陽花にてんとう虫がいるよー」

 …………え?

 かなちゃんの声がヤケに遠くから聞こえたから、慌てて体制をもとに戻す。
 十メートルほど前方にかなちゃん発見。あれ、この展開は……まさかまさかの

すべてが終わってから気づいてしまった。

(これ、鎌田くんとおんなじじゃない?)
09.09.16


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