小説調で10のお題
詐欺師(山京)
(ヤンデレ京子要注意!)
「嘘つき、山本君の嘘つき」
「笹、川……、何でこんな事……」
全部山本君がいけないんだからね?
* * *
良く晴れた日だった。
「これで今日の書類は終わり!そういえば山本君に呼ばれてたっけ?」
あたしはボンゴレでツナ君の部下として働いていた。
そして、
「よっ!仕事終わったか?」
「あ、今終わったよ!」
ツナ君には秘密で山本君の彼女になっていた。
「じゃ、早速デートに繰り出すか!」
「うん!」
こうやって仕事に空きができると近場のカフェでお茶するのがあたしの楽しみになっていた。
だけど、今日の山本君は様子がおかしかった。
笑顔もひきつってるように見えるし、口調もいつもよりこわばって聞こえた。
―――嫌な予感がした。
「ねぇ、山本君。今日様子おかしいよ?何かあったの?」
あたしがケーキをつつきながら聞くと、山本君は背筋をこわばらせて眉間にしわを寄せて啜っていたコーヒーを置いて言った。
「なぁ、笹川。今日は大事な話があるんだけど……」
―――聞きたくない言葉が彼の口から飛び出す予感がした。
「あのさ、おれ達の事、ツナにばれちまったみたいだ」
「……それで?山本君は何が言いたいの?」
その時私はどんな顔をしていたのかは分からない。
ただ、山本君は更に俯いて小さな声で返事しただけだった
「そしたら、ツナが怒ってさ……、親友じゃないのかよって……」
―――彼の言いたいことが分かった。
―――分かりたくなかったけど分かってしまった。
「笹川、オレはもうお前とは「付き合えないんだね?」……っ!」
私は精いっぱい顔に笑みを浮かべながら、席を立ってカフェから飛び出した。
―――何でだろう、彼の表情に恐怖が浮き出ていたのは何でだろう?
* * *
カフェで笹川はオレに笑いかけていた。
だけど、目が笑っていなかった。
見てはいけない『闇』を見てしまったかのような恐怖が背筋を駆けた。
オレはしばらく動けずに一人で座り込んでしまった。
―――オレは後にその事を激しく後悔することになった。
* * *
赤。
赤、紅、朱、赫、緋、赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤!!!!
私の手は真っ赤に染まっていた。
いや、手だけではなく服も顔も豪勢な執務室も返り血で赤く染まっていた。
「ツナ君、もうすぐ山本君が帰ってくるよ?」
返事はない。
ドタバタと廊下を駆ける音が聞こえた。
ツナ君の部下はあらかじめ撤退させたからきっと山本君が、あたしの部屋か山本君の部屋に置いておいた置手紙を読んで来たんだろう。
≪ガチャ≫
「山本君、おかえり」
山本君は部屋の扉を開けて入ってきた途端気持ちの悪い異臭とその信じがたい光景に息を詰まらせた。
「っ!!!!!!!!!!お、お前、笹川っ!!!!」
「なに?どうしたの山本君?ああ、この部屋?真っ赤で綺麗でしょ?せっかくだからツナ君もきれいになってもらったの」
私の足元には二度と動くことのない塊があった。
そして私の手には黒い銃が一丁握られていた。
「笹、川……、何でこんな事……」
山本君は引き攣る喉で声を絞り出して言った。
「何で?なんでって言ったの?うふふ!そんなの簡単でしょ!?山本君もわかってるんでしょ!?」
「だからって……!こんな、オレのダチに手を出さなくたって……!」
「……山本君の嘘つき」
「!?」
「全部山本君がいけないのよ、山本君は私に嘘ついたもん。あの日、約束してくれたよね?『あたしを傷つけない』って!」
私の頬に水がすぅっと流れた。
「嘘つき嘘つき嘘つき!!!!私は山本君と付き合ってたのに!!!なんで!?何でコイツに関係がバレた位で!!!!コイツさえ居なければ!山本君は私だけを見ていてくれたのに!!!!」
「笹川!落ち着けって!」
足元の塊を力一杯踏みつけ始めた私を、山本君が肩を掴もうとしたけど私はそれを、銃を持った手で払いのけた。
「山本君は友達が大好きなんだよね!!??何よりも大事なんだよね!?あたしなんかよりもよっぽど大事なんだよね!?」
「っ!!ダチは確かに何にも代えられねぇけど、笹川はもっと別の意味で好きなんだって!」
「憎いの!あんたもよ!!!!!あんたがっ!あんたがっ!あんたがあたしを優先してくれてたらっ!」
潤んでぼやける視線の中、癇癪を起こした子供のように泣きじゃくりながら私は片手で銃口を山本君に向けた。
「……なぁ、笹川がそこまで俺を恨んでるって言うんだったら撃ってもいいぜ?」
そう言った山本君の顔は悲しそうな笑顔で、それがさらに私を追いたてた。
「嫌い嫌い!大っ嫌い!!!!!」
ガクガク震える片手にもう片手を添えたら震えが止まった。
「……本当に、大嫌い、私を愛してくれない山本君なんてっ!」
私は引き金を引いた。
≪パァン!!!!≫
ドサッと彼の体が崩れ落ちて執務室の床に倒れ伏した。
「でも」
私は彼に近づいて左手で頭を撫でた。
「そんな山本君でも」
銃を持った右手を持ちあげた。
「ううん、そんな山本君だったからこそ」
銃口を私自身の頭にくっつけた。
「大好きだったの」
乾いた音が執務室に響き渡った。
* * *
(嘘つきな彼の笑顔が大好きで大嫌いだったの)
09/10/13
お題元:処女懐胎と胎内記憶に基づき
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