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非日常的な日常
2



それから一悶着あったりなかったりしながらとりあえず理沙と空音は公園に向かっていた。


ちなみに理沙は帽子をかぶって、長いスカートで尻尾と耳を隠していた。


「あ゛ー!!あいつボンゴレが僕達の生活を支援してるからってえらそーにしやがってコノヤロー!」


「まぁ、しょうがないって(汗)リボーンがいなくちゃあたし達はのたれ死んでるんだからね……」


「……うむ、納得いかない」


「ハハハ……」


≪ドン!≫


「狽ヌぅわ!?」


理沙の愚痴を聞きながら歩いていると紫に近い藍色の髪の毛の女の子があたしの体当たりしてきた。


「!ご、ごめんなさい……」


ぺこりと誤ったのは右目に眼帯をつけたとてもかわいい女の子だった。


「……!あの、君ってもしかして凪……いやクロームちゃん?」


理沙が訊くと彼女は怯えたように肩を震わせた。


「……何で、知って……」


「ああああ!怖がらなくてもいいよ!確かに理沙は目つき悪いし暴力癖はあるけど根はいい人だから!」


「(カッチーン)僕は理沙、このドチビの間抜けオタク野郎は空音。えーっとあなたを知ってるのは気にしないで!敵とかじゃないから!」


「そうそう!むしろあたしはかわい子ちゃんの味方だから!」


「…………味方……?」


クロームが俯いた顔を上げるとちょうど理沙と目があった。


「!あなた、骸様が言っていた……!」


「ん?僕?何で骸が僕のことを話してんの?」


理沙は自分自身を指さして聞くとクロームは一旦目を閉じ、再び目を開けた時目つきが変わっていた。


その目はまるで―――――


「え、もしかして骸……?」


「骸様キタキタキタキタキタキタキタキタキタァァァァァァァァァァ!!!!!!」


彼女の口から発せられたのは例のミステリアスな笑い声だった。


「クフフ、お久しぶりです理沙、それと初めまして空音」


クロームちゃんの姿で一礼されて私たちは全く違う反応を見せた。


「……ひ、久しぶり……(想定外で何を言えばいいかわからない)」


「初めまして骸様!!せっかくだし実体化希望!(欲望に忠実)」


「……なるほど、空音は犬に近い匂いがしますね……。残念ながら今回はクロームの体で勘弁して下さい(空音の反応に困っている)」


苦笑されてしまってちょっと凹んだ。


「ほらー……骸困ってるって(汗)っていうか骸は体力的にこっちに出てきていいの?」


理沙がそう聞くとクロームちゃん(骸)はまた困ったような顔をしてほほ笑んだ。


「そうですね……実際クロームの体に憑依をするのは簡単ですが復讐者達が僕の力をかなり押さえてしまっているので……。そんなに時間があるわけではないんですよ」


「…………、あんたも大変だね……」


「うーん、復讐者の牢獄から骸様を助けてあんな事やこんな事したい……」


あんたは骸をどうするつもりだ


その時突っ込んだ理沙の耳が勝手にピンと立って、猫耳を隠していた帽子が少しだけ動いてしまった。


それをあの骸が気づかないはずもなかった。


「おや?失礼しますよ」


と問答無用で骸がクロームちゃんの姿で背伸びをして、帽子を取られ猫耳が晒された。


「ちょっ!?//////うあっ!そんなにこっち見ないで見ないで帽子返せえぇぇぇぇぇ!!//////」


「……やっぱり猫耳理沙萌え」


空音は黙ってろ!


慌てふためく理沙を見て流石の骸でもポカンとしてしまった。


というかあまりのも似合いすぎていて言葉が出なかったのだ。


「オイ!骸もジロジロ見てんじゃねーよ!!//////」


「あ、失礼しました。でもそんなに恥ずかしがらなくても僕はかわいいと思いますよ?」


「っ!!!イタリア人氏ね!(どいつもこいつも悪びれずに変なセリフ言いやがってこのやろー!!)」


……とりあえずあたしはイタリア人のみんなに謝った方がいいと思った。


ほら、並盛町ってイタリア人だらけだし……。


「クフフ、理沙は面白いですね」


「山本みたいな事言うな。つかいい加減帽子返せ」


「あ、忘れていました」


「忘れるなよ!こっちは恥ずかしいんだ!」


「…………。(いーなー、理沙。あたしもあのくらいくっ付きたい!)」


ちょっと寂しかったので帽子を返したクロームちゃんの服の袖を引っ張ってみた。


「おや?」


「ねー、理沙とばっかりイチャついてないであたしとやらないk「痛いからやめろ、それとも殺らないかの方?(黒笑)」いやいやジョークだから!骸様と殺し合いしたら勝ち目ないじゃん!」


「クフフ、漫才っていいですね」


「ツッコミのあたしからするとめちゃ疲れるんだぞ!」


「ボケは楽しいよ!」


「ドMは黙ってろ!」


「やだなぁ、そんな事を言ったらMU☆KU☆RO様のMがマ
ゾのMって話になっちゃうじゃん」


ならねーよ!!!!!!」


この会話はちょっとしたジョークで骸はやっぱりほほ笑んでた。


「ま、理沙だけじゃなくてあたしにも構ってね!せっかくこの世界にトリップ出来たんだし、骸様とも仲良くなりたいから!」


さりげなくあたしは骸の右手をつかんで両手でぎゅっと握った。


温かい手だった。


「僕と仲良く……ですか。君は、いや君達は変わってますね。やっぱり異世界から来ているだけありますね」


「空音と一括りにしないで欲しかったけど……。そういやあんた、僕達の話聞いてたんだ」


「アルコバレーノにはクロームから僕の気配を見破られてしまいましたよ」


「さっすが最終最強鬼畜家庭教師ヒットマンリボーン……。こわー……」


「ええ、会って一言目が『お前、骸のなんなんだ?』でしたからね。あ、そう言えばわざわざ出て来たのに君達に用事を言うのを忘れてました」


「…………骸ってもしかして公式でもアホキャラなの?物忘れ激しくない?」


「(煤I!!)えっと、普段は違いますよ!今は……その、憑依するのに精神力を消耗していしまっているだけですよ」


かっこつけたいお年頃なのか分かりやすい言い訳されてしまった。


……んー、確かにこの世界の骸様って原作のイメージとは微妙に違うなぁ。


パラレルワールドだから?


「精神力ね……、てか結構話しこんじゃったけどさタイムリミットは大丈夫なの?」


「そろそろですね。先日ボンゴレに憑依けしかけしに行ってましたから」


「77の小説に載ってたみー君のか!」


「(小説?)まぁ、そんな訳ですから要件を言ってしまいますね。僕はそろそろいなくなりますから、クロームを犬達の所に送り届けてくれませんか?」


「ん……まぁいいけど……」


「骸様のお願いなら喜んで!」


あ、忠犬とセリフがかぶった。


「それなら良かったです。クロームを、よろしくお願いしますね?」


そう言ったかと思うと骸は目を閉じて再び目を開けた時はクロームの表情になっていた。


「あ…………、骸様と話してたんだ……」


「うん、まあそんなところ。あんたを犬と千種の所に連れてって欲しいって頼まれてたんだよ」


「いーなー!クロームちゃんめっちゃ愛されてるね!」


あたしがそう言うのと同時にクラッとクロームの体が揺らいだ。


「……!そっか、憑依されるのって体力使うんだったっけ……」


「そう言えばそうだった。じゃああたしはクロームちゃんとここで待っているから空音は公園まで薬取りに行って来て」


「猫耳の存在忘れてたー!つかあたしってパシリ!?」


「だって空音とかわいいクロームが一緒にいたらクロームが危ないだろ」


「失敬な!」


「?」



* * *



空音が去って(というか行かせて)、僕とクロームと二人きりになった。


ベンチも何もないので住宅街につながる階段に二人で腰かけた。


「……いいの?」


「空音?まぁあいつはいいんだよ。ぶっちゃけクロームと空音を二人きりにしても空音が手を出す確率は(多分)低いけどね」


「なら、なんで?」


「クロームにちょっと聞きたい事があったから」


理沙は眼の前の道路と時たま流れる車を見て、クロームはその横顔を見つめていた。


「クロームはさ、骸から僕の事なんて聞いてる?」


「……それは、言えない……。骸様が秘密にしてほしいって」


「そっかぁ……、あーあ、やれやれはこっちの台詞だ
し」


……クロームが口下手なのか、骸が聞かれた時になんて答えたらいいか教えなかったのが悪いのかは分からないけど、僕の予感は的中していたらしい。


「自分で言うのも変な話なんだけど骸ってさ、僕の事が好きなんじゃないの?」


「!!!そ、それは……!」


図星だったみたいでクロームは目を泳がせた。


「別に気にしなくていいよ。ただ……」


そうだとしても僕は、骸と付き合うつもりは今のところないよ。



「骸は嫌いじゃない。むしろかっこいいし好きの部類
に入るけど……。恋人の対象になる人じゃないんだよね」


「……他に好きな人はいないの?」


「いないよ」


と、ようやく理沙はクロームの方を向いた。


「骸には悪いと思うけど、僕は好きじゃない人とは付き合えないかなって」


「そうなんだ……」


「クロームはなんも悪くないからね!……そうだ!さっきチョコレート持ちだしてきてた!せっかくだし一緒に食べよ!」


「ありがとう……」




* * *



うあぁぁぁあぁぁ!!!これは幻だ幻覚だ!!!ここここんなところに!


「やぁ空音」


公園にヒバリンなんて居るわけないもん!!!


「今日は群れてないんだね」


「えっと、まぁ……」

「じゃあ暇だよね?僕と遊んでよ」


いや゛ぁぁぁぁ゛ぁぁ゛ぁぁ゛ぁぁぁぁぁ゛ぁぁぁ!!!!!!!!!!!


なんでなんで!?あたし群れてないじゃん!ヒバリンと遊ぶって事は咬み殺されるってことなんだよ!?


「ちょ、今回は勘弁して下さい!」


「うーん、でも殺し足りないんだよね」


……やっぱりあなたの足元にある屍はあなた様の仕業でしたか。


「あの!今回は理沙のために公園にある薬を持ちに来ただけです!早く帰らないと理沙に殺されるんで!」


「僕には関係ないよ」


シャキンッ


「出たよトンファーーーーーーーー!!!!!」


「さぁ行くよ」


ヒバリンがこっちに突進してきた!


あたしはしょうがないのでポケットから二本刀の形をしたストラップを取り出し


「満月!」


でガードした。


ギリギリと金属同士が擦れる音がした。


「僕と遊んでくれる気になったみたいだね」


「だからそんなつもりはないって!」


凶悪な笑みに若干ビビりながらも(これでも慣れた方)言い返すと、ふと雲雀は何を思ったかトンファーで満月を横に薙いでトンファーに体の横、つまり戦闘態勢を解除した。


「えっ……!?」


珍しすぎる、普段ならあたしが咬み殺されるまでトンファーをギュンギュン振り回すのに……。


「何その顔?もしかして咬み殺されたかったの?」


滅相もございません!


あたしは勢いよく頭を下げた。


「……ねぇ、山本武って何なの?」


「へ?」


質問の意味が全く分からなかった。


「山本君はえっと、人間ですけど……」


「僕がそんな答えを求めてるとでも?」


「ごめんなさいorz」

あたしを睨んだ目があまりにも凶悪で土下座して謝っ
た。


「そうだな……、山本武は君にとって何なの?」


「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


何この展開!?


これが雲雀甘の夢小説ならまだしも何でこの雲雀さんがそんなこと聞くの!?


「いいから答えてよ」


……甘い展開などないんだけどね。


雲雀さんはいつも通りの仏頂面で頬とか耳を赤くしているとか全くない。


むしろ赤い所と言ったらさっきの屍の血がスラックスの裾の付いてるくらいだね!


ああもう視線が怖すぎる!


「ややややや山本君はあたしの友達です!」


「それだけじゃないよね?だって君達仲いいじゃないか」


「ええええ!?そ、それは……」


「誤魔化さないでね。君が他の人間と話している時と山本武と話している時。君の表情違うよね?」


なななななななんでそんな事雲雀さんは聞くのかな?かな!?


よし、落ち着いて考えろ!


……、…………、………………、……………わかった!!!!


「雲雀さんって山本君の事が好k≪ボゴォッ!≫ふげぇぇぇ!」


「ふざけた事言わないでよ。気持ち悪い」


えー!何その目!そんなに応接室に落ちてた草壁の髪の毛を見るような目で見ないでよ!っていうか山ヒバじゃないの!?(全部心の声)


「はぁ……君って相当バカだよね……」


「これでもたぶん雲雀さんより年上です……」


「立場は僕の方が上だけどね」


完全に見下されてる!!!!


年上の威厳0!


「じゃあ言い方変えると君は山本武のことどう思ってるの?」


露骨ですね!


……もちろんどう思ってるかっていうと、萌えの対象じゃないし……//////


っていうかきき方からしてすでに確信してるじゃん!


「後三秒ね、3、2、1、咬みk「確かにあたしは山本君の事が好きです!//////」ふっ、ようやく言えたね」


そう言われて頭を撫でられた。


ってええ!?どうして!?良く見ると雲雀さん目が据わってるよ!?顔と動作の不一致ってかなり怖いんだよ!?


今の録音しといたから。これで君は僕に逆らえないね(ニヤリ)」


「そんなバナナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」




(あのお方にとんでもない弱みを握られてしまいました!)


(あれ、僕の好きな人?……何か大事な事忘れてるような?)




* * *



09/11/05




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