非日常的な日常
2
山本君と一緒に学校に通うのはちょっと抵抗があった。
だってすれ違う女の子の視線が痛いんだもん!
山本君の部活は黒曜の騒動のせいで休みなんだって。
「そういえば腕の怪我とかは大丈夫!?」
「ああ、案外直ぐに治るらしーから一週間後には部活もできるみたいだぜ!ってなんで空音が知ってんだ?」
「狽「ろいろあったんだよ!(口滑った!)」
「ふぅん……」
そのままテクテク歩いてるとようやく見覚えのある家に。
「ツナのうちだ……」
「おはよーツナ!一緒に学校行こーぜ!」
山本君が爽やかな大きな声でツナを呼ぶと、曲がり角からやってきたミスターG。
「あ!野球バカ!……とブス女!」
「獄寺、お前もいたのか」
「ごっきゅん朝からかっこかわいいけどブスって呼ばないで!」
「おい!かわいいって言うな!その呼び方やめろ!虫唾が走る!」
「だってごっきゅんはかわいいごっきゅんじゃん!」
「意味わかんねーよブス!」
「二人とも仲いいのなー!」
山本的まとめが出たところでドアを開けてきたのはボーイッシュな美少女、
「って理沙じゃん!」
「はよ……、ってツナは何故そこでコケた(ダメツナかわいい……)」
「足が滑った……」
理沙の後ろからひょっこり現れたのはみんなお馴染みのツー君。
理沙は普通に制服を着ているだけのはずなのに、スタイルのいい体のせいか大人びていて、制服と男子用のネクタイをいい感じに着こなしていた。
「それにしても……、空音中学生の制服の方がしっくり来るね」
「泣くぞ!?」
* * *
並中でツナ達は教室へ、私たちは教室に行ってもしょうがないのでとりあえず場所を教えてもらって職員室に向かった。
「まさか僕がまた中学校に戻るとは思わなかったなー」
「同感!よく考えたら応接室でもよくない?」
「逝きたいなら勝手一人でどうぞ」
なんて会話をしながら理沙が職員室のドアをノックし、一歩踏み入れると
「……ワォ」
「え、どうしt……ワォ!!!」
「二人して僕の真似して気持ち悪いよ。そんなに咬み殺されたいの?」
雲雀さんが、先生に何か命令していました。
先生の顔はなにやら真っ青。
理沙は固まっている空音に耳打ちした。
≪逃げるよ、空音≫
空音はいまだに静止したまま約1秒。
「ひばりんかっこいーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
声の限り叫んだ。
「這這這煤I!!!???(なんて事しやがる!?)」
「…………。何?そんなに二人して咬み殺されたいなら早く言ってよ」
雲雀は目をギラリと輝かせ、トンファーもギラリと光る。
「空音のバカ!死ね!」
理沙は空音の腕をひっつかんで、本能的に階段を駆け上がった。
「あ、やべ……、ごめん」
「『ごめん』で済むか!ドアホ!!」
「待ちなよ」
ドダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……
先頭から理沙、空音、雲雀の順に走って行くが、すぐに屋上に追い詰められてしまった。
「…………(冷や汗ダラダラ)」
「…………(視線で理沙に謝ってる)」
「…………(すごく楽しそう)」
満面の笑みともいえる雲雀にじりじりにじり寄られて緊迫した空気が屋上に充満していた。
「まずは一番うるさい君から咬み殺してあげる」
トンファーで指名されたのはみんな (?) の予想どおり先ほど失言をやらかした空音だった。
「ギャァァアァァァァ!!!」
ヒュン!
早速トンファーが襲いかかってきたが、すれすれで何とか避けられた。
「ちょ、落ち着こう!平和っていいよね!素晴らしいよね!平和万歳!」
「「(何いってんの?汗)」」
訳わからないことを口走る空音に呆れながらも雲雀の握ってるトンファーは臨戦状態である。
「ま、いいや」
ヒュンヒュン!
「ぴぎゃあぁああぁぁぁ!!!」
連続で襲いかかるトンファーに奇妙な悲鳴を上げながらよけていく空音に雲雀は少し驚いた。
「よく避けれるね?」
「(っていうか雲雀さん怪我してるからか調子悪そう……)」
ヒュン!
また横薙ぎに飛んできたトンファーに後ろに引いて避けたが、気づくと頭上にもう一本。
「(ゲッ!避け切れない!!!!!!!)」
ニヤリ
凶悪な瞳と視線があった瞬間背筋がゾクゾクッと震え、無意識に叫んでいた。
「満月!!!!」
ガキィィン!
「「「!!??」」」
金属同士がぶつかり合う音と共に上から降ってきたトンファーは二本の黒光りのする刀に受け止められた。
「あれ……、クソ神の……」
「君も武器持ってたんだ。いいね、楽しくなってきた」
「(え゛ー!?なんか出てきたー!?)」
突如現れた刀に驚く空音と理沙、さらに瞳を輝かせる雲雀。
ヒュンヒュン!
キンッ!ガキン!
トンファーを次々に跳ね返していく空音を見ていた理沙は、雲雀に視線を移した瞬間また驚きの表情を見せた。
「!!!雲雀さん!腹から血が!」
「え!?本当だ!傷口開いちゃってるよ!」
ドカッ!
「よそ見しないでよ」
「いった!ちょ、人心配してるのに殴ることないじゃんか!バカー!」
涙目の空音。
「心配……?いらない、そんなの」
あっさり言う雲雀だったが、制服の紅い染みはどんどん広がって行く。
「うあああん!ヒバリンが死んだら≪ガキンっ≫おいこら人の話k「聞かない」……」
ドタバタドタバタ……
「委員長!!!!!!!!」
第二ラウンドに突入しかけた屋上にやってきたのは草壁だった。
「あ、若い草壁だ……(顎が気になる)」
「顎壁じゃん!」
「(顎壁?)……何か用なの?」
「委員長お怪我されてるじゃないですか!ここは安静にした方が」
「絶対やだ」
「しかし傷口も開いてますし……!」
「このくらい平気だよ」
顎壁発言の後、ボケっと様子を見ていた空音の腕を引っ張って小声で理沙は言った。
「今のうちに逃げるよ!」
「!うん、りょーかい」
キーンコーンカーンコーン
1時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
へぇ、あの子達って転入生なんだ。
これから楽しくなりそうだね。
09/09/06
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