[携帯モード] [URL送信]

非日常的な日常
2



「おー見えてきた見えてきたぁ!!!!」


「なんでそんなにテンション高いんだ……」


「…………」


あたし達一行は黒曜ヘルシーランドに到着いたしました!


「だってだって犬ちゃんと柿ピーに会えるんだよ!?」


「まぁそんなもんだとは思ってたよ。それにしても寂れてるね……」


「前に一回来たんだけど、追い出されちゃって……」


「むぅ、むしろあたしならこんな可愛い子家に連れ込むのにな」


「それ、犯罪だからな」


ここからはあたしが先頭で瓦礫を踏み越えつつ進んでいった。


と、ヘルシーランドの入り口に二つの人影が見えた。


「〜〜〜〜!!!」


「あれが犬と千種かぁ……って何あんた震えてんの?」


≪ダダダダッ!≫


犬ちゃーーーん!!!ちぃーくーーーん!!!!!かーわーいーいー!!!!!


「這買Lャッ!」


「あ゛ー!こんな所で萌えスイッチ入れてんじゃねー!!!!!クロームがビビってるだろうが!!!!」


理沙の叫びも虚しく、あたしの耳には届いていなかった。


この世に萌えに勝るものなし!


「「這狽ネっ!?(何か来たーーーーー!?)」」


あたしを見てギョッとする犬ちゃんと柿ピーに構わず、あたしから見て手前にいた柿ピーに抱きつこうと特攻をかけた。


「柿ピー!!!!!!!!!!!vV」


「(怖っ!)」


≪シュシュッ!≫


「狽ャょわ!」


柿ピーはヨーヨーではなく先端に重りが付いたロープを投げてきた。


当然ロープはあたしの体を縛る形となって、後50センチで柿ピーに届かず、あたしは倒れてしまった。


「……捕まえた……」


「つかなんだぁ?この女」


「やだな柿ピー、予想はしてたけど束縛なんてやっぱりマニアックなプレイがお好みなんだねぇ」


「(ゾワゾワッ!!!)……犬、後は任せた」


「狽アんな変態俺だって嫌らよ!」




* * *




脇で全体重を受け止める形になって、顔をしかめてると下で人体がひしゃげる嫌な音がした。


反射的に下を見ようとすると目を塞がれた。


「コラコラ見ちゃダメー。あんた自分の死体が見たいの?」


「し、死体……!?」


だって現にあたしはここにいるし……、じゃあこの体は幽体離脱でもしてるとか!?


目を塞がれたまま思考を巡らせていると、(おそらく)女の人はこう言った。


「まぁ、あれは私が一瞬で作った偽物だけど。私達は今、普通の人間には見えなくなってるし。それで、あんた自身はまだ生きててもらわないと私がめんどくs……困るのよー」


本音が聞こえた。


「こんな姿勢じゃあなた脇痛いでしょ?ちょっとワープ使うわよ」


「え!?どうい……眩しっ!」


一瞬女の人の手越しでも目が痛くなるほどの光に包まれて、気づけばあたしは安定した床の上で足に力が入らずしゃがみ込んでいた。


……床じゃなくて雲でした。


「うあぁ……目痛い……、沖田さんのアイマスクが欲しかった……」


「どんまい☆」


目の前に立っている女の人がきっとあたしをこんな所に連れてきたのだろう。


「……あの、なんであたしは生きなくちゃいけないんですか?」


もう死んじゃって楽になるつもりだったのになんだかおかしな展開になってしまった。


「え、だってあなた漫画のリボーン好きでしょ?」


「はぁ!?」


いや、大好きですけど!?リボーン知らなかったらもっと早く自殺してましたけどね!?


「10年に一回あなた達の世界から3人トリップさせなくちゃいけないのよ。神様の仕事でね」


ああ、神様だから飛んだり、あたしの偽物作ったり、姿消したり、ワープできたりするのか……。


「そんな訳でトリップして来て頂戴!」


……って神様だからってそこまで納得できるか!!!!


神様ってこんなにフレンドリーでいいのか!?


「あの、あたし……トリップなんかしなくていいです……!だって、もう死ぬつもり、だったのに……っ!」


お前の意見は聞いてない


「這這這迫摯s尽過ぎませんか!?」


ヤバい、なんだか涙か出てきそう……。


「えっと、あなたのイメージ的に武器はこれでいいわね」


そう言って投げられたのはピンクのウサギのぬいぐるみだった。


「……あたしこんなの似合わないと思いますけど……」


「あら?あなた無自覚?それなりにロリ系の服着て髪型変えればかなり空音ちゃん好みのロリっ子なのねぇ」


一生そんな服着ません!


「って空音さんって誰ですか?」


「優菜ちゃんより先にトリップしてきた変態っ子よ。それともう一人ツッコミ担当の理沙ちゃんもいるわよ」


何であたしの名前知ってるかはともかく、女の子か……やだなー……。


「ふぅん……女の子が嫌みたいね。トラウマってやつね……じゃあトリップ先は女の子がいない所で……」


「ちょっとまって下さい!!!(ごっきゅんのいる並盛町にも女の子居るー!!)」


「(聞いてない)Let’sヴァリアー!☆」


そう明るく神様が言った途端、また目が痛くなるほどの光に包まれた。


イヤァァァァァアァァァ!!!!




* * *



黒曜ヘルシーランドでは空音が拘束されて喜んでいた。


「……空音を助けに行ってくる」


草の陰で息をひそめていたクロームが立ち上がり言った。


「うん、じゃあ僕も犬と千種を助けに行ってくる」


どっからどう見ても犬も千種も空音の発言で顔が真っ青だし……。


僕は立ち上がり、犬と千種に近づいた。


クロームも僕の後ろから付いてきた。(可愛いなオイ!)


「!!なんら!お前もコイツの仲間か!」


「……仲間でも仲間じゃなくてもこの子は連れて帰ってもらうよ。……マジでお願いします」


…………。


空音に何言われたの!?


「えっと、うちの変態がご迷惑おかけしました」


あれ?かわいそ過ぎてつい謝っちゃったよ?


「変態で何が悪い!」


「純真な(?)中学生に平気で妙な事吹きこんでる時点で悪いだろ」


「何でもいいから……連れて帰ってよね……」


「アハハ……とりあえずこの紐解くよ?」


「ってお前は!この前の!!!!」


僕が空音の紐を解こうとしゃがんだ所で、犬はようやくクロームに気がついたようだった。


「……犬、千種……、この前の話信じてくれた?」


「誰が信じるかっ!!!!お前みてーなひょろい女に骸さんとの交信役が務まるかっ!」


「犬と同じく……」


あー、成程ねぇ……。まぁそう簡単に信じられる話でもないってことか……。


「理沙ー!!なんで解くとか言いながら更にきつくしてんの!?


「あ、手が滑った」


「絶対嘘だー!!!」


そんな冗談はともかく、空音をちゃっちゃっと解放した。


振り返るとクロームはなかなか犬と千種を上手く説得できないようだった。


空音は解放されるや否やこれまた猛ダッシュで三人の間に割り込んだ。


「ねえねえ!クロームちゃんが言ってる事は本当だよ!だってあたしさっきクロームちゃんから実体化した骸様見たもん!」


「狽ネんらとぉ!!!!!?????」


「……それ、本当?」


千種は半信半疑で僕に聞いたので頷いておいた。


「本当だよ。あたしもこの目で見たからね」


「じゃあ今すぐ骸さん出せよ!!!」


犬が掴みかかると困ったようにクロームは眼を伏せてしまった。



「…………骸様は、さっき出てきたばっかりだから……、今は疲れて休んでる……」


「証拠がないなら信じらんねーびょん!!!」


証拠って言われても困るんですけど……。


この台詞でその場にいる全員が沈黙してしまった。


しばらく沈黙が続いて千種が何か言おうと口を開きかけた時、空音が何かを思い出した。


「あ……証拠ならあるよ!」


空音はそう言うとポケットの中をごそごそ探り始めた。


「「「「?」」」」


僕たちが空音を見守ってると……


「これこれ!骸様の髪の毛!!!!


「「ええええええええええええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」」


「「…………(ぽかーん)」」


空音の手には確かに骸の物らしき髪の毛が数本握られていた。



* * *



「目、いったぁー……」


強制ワープのおかげで目が開かないあたしはホコリ臭い場所に飛ばされたみたい……。


とりあえずここがどこか知りたいが為に目に痛みと挌闘してたら、何かを隔てて声が聞こえた。


「ん?なぁマーモン、倉庫からガキの声がしなかった?」


「さあ?僕には聞こえなかったよ?」


この声はベルとマーモン!!!!


ヤバいヤバい!見つかったら殺される!!!


痛い目をなんとかこじ開けると、薄暗い倉庫で部屋中に銃器やら刃物やらなんだか危ない物が溢れていた。


「…………。(うわぁ……)」


あたしは何とか人が入れそうな所を探したけど、何処に行っても触ったら怪我しそうな物が一杯で、結局動きが取れないでオドオドするしかなかった。


「んー王子には確かに聞こえたんだけどなー……」


カッカッとベルが近づく音が聞こえて、体がどんどん強張っていくのを感る。


既にあたしは頭を抱えて丸くなる事しか出来なくなってた。


≪ガチャ≫


「…………。何これ


ベルの視界に入ったのはアルマジロのごとく丸くなった日本人の女子中学生だった。


「…………っ!(怖いよ怖いよ怖いよ怖いよォォォォ!!!)」


「ベルー?何か居た?」


「しししっ、アルマジロが居たぜ」


アルマジロでも何でもいいから誰かこの恐怖の時間から助けて!!!


女の子の恐さとは違う恐怖でブルブル震えていたあたしの首筋に冷たい物が当たった。


「ギャン!!!!」


背筋に強烈な震えが走って、今度は勢いよく起き上がって正座の体勢になってしまった。


「うししっ!こいつおもしれー!」


「なかなかいい反応だね」


目の前にはベルとマーモンがいた。


漫画とは違って生で見るとかなり怖い!


「なー、なんか喋ってみろよ」


「(ガクブルガクブル)は、え、え、えと、アタシ、アルマジロ、チガウ、デス」


って何言ってんのあたしー!!!???


我ながらテンパリ過ぎ!


「買uッ!!!ししししししししししししししししししししししししししししししししししししししししししししっ!!!!!!ひぃー!なにコイツ!!!面白過ぎんだけど!!!!お、王子笑いすぎて死にそー!」


「……ベル、笑いすぎ。落ち着きなよ」


「や、だって、まさか命乞いもしないで、ししっ、アルマジロじゃねーって言うとは思わねーじゃん!ししししっ、笑いが止まんねー!」


目が見えてたら絶対涙目だと思います……。


っていうかここまでおなか抱えて笑われたら恐怖もどこかに行っちゃいました……。


「あんらー?ベルちゃんの凄まじい笑い声がしたから来てみたんだけど……」


「うるさいぞ貴様!!!それにこの女は何者だ!!!!」


「買qイッ!」


ベルの笑い声で駆けつけたレヴィとルッスはそれぞれ違う意味で怖いです……。


ムキムキのオカマって妙な迫力がある事を学びました……。


「んー!この子可愛いわーvVメイド服着せてみたくなっちゃう!」


嫌です!


「だからそもそもこの女は何者だ!」


「ぷくく、王子は、しししらねーぜ」


「君はまだ笑っていたのか……。ベルが倉庫から声がするって言って見てみたらこの女が居たんだ」


「ならばスパイという事ではないか!即急に処分s「レヴィ、ちょっと待って」なんだマーモン!!!」


「この女は正真正銘のカタギだよ。マフィアだったら、まずどんなに幼くても敵の前でアルマジロになるような真似はしないからね。おかげでベルはこの通りさ」


「もうこいつの名前アルマジロでよくね?しししっ!」


そうきますか!?


「だったら、アルマジロちゃんはどうやってこのヴァリアー邸に来れたのかしら?」


アルマジロが定着し始めた!!!


「そうだ!!!!俺たちヴァリアーがこうやって集合していること自体知られるわけがないのに、一般人ごときにこの場所が知られるわけがないのだ!!!!!ここに居る、すなわち何らかのスパイに決まっている!!危険因子はすぐに排除すべきだ!!!」


そう言ってパラボラに手を伸ばしたレヴィをマーモンが制した。


「ねぇ、アルマジロはどうやってここに来たのか説明してもらいるかい?」


…………はい、どうせあたしはアルマジロです……。


「あの、多分ちょっと信じてもらえないと思うんですが……」


「どんな内容でもいいからとっとと言ってよ」


触手が出てきたー!!!!


「はい!言います言います!その、あたしは…………」


ってどう説明すればいいんだろう……。


うーん……。


「あたしは別の次元から神様にこの世界にワープさせられたんです……」


……要約し過ぎた!!!


セリフ一つで終わっちゃったよ!?


「はぁ?このアルマジロ何言ってんの?」


「んんー?良く分からないわー?」


「神など居るわけがないだろうが!別次元うんぬんも俺は信じない!!!」


ですよね……。


視線が痛いです……。


「うん、このアルマジロは間違いなく第三夜の一人だね」


「「「!!!!!」」」


だいさんや?


「みんな、アルマジロをボスの所へ連れて行くよ」



* * *



(あんたいつの間に骸の髪の毛を……)
(記念にと思って理沙と話してる間に抜いた!)

(ボスってXANXUSですよね!?怖いよォォォォォォ!)




09/11/14





[*前へ]

2/2ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!