非日常的な日常
1
山本君の為に、あたしに出来る事。それはいったいなんだろう……?
この恋、勝ち目は0じゃない……!(かも)
今わかったんです!生きるってとっても価値もあることだって……!
Action.16〜大切なもの〜
「ちょっとツナに話しておきたい事があるんだけど……いい?修行とか大丈夫?」
「ううん、正直さっきの事謝らないとって思っちゃって集中できなかったからこうして話せてよかったよ……って修行の事知ってたの!?」
「ハハン、そんな事お見通しだって!……っていうのは冗談で、元の世界でどうなるかって事はだいたい知ってるからね……。ま、僕達がトリップしてきた時点でこの世界は原作の世界とは違うパラレルワールドなんだろうけど」
「……ごめん、よくわかんないや」
俺は理沙ちゃんに誘われて竹寿司から徒歩で5分ぐらいのカフェのテラスでケーキと紅茶(理沙ちゃん)とカフェラッテ(オレ)を頼んで会話を交わしていた。
「ハハハッ、気にしなくていいよ!ん……まぁ、僕が前にいた世界の話だからふーんって聞いてくれれればいいよ。本来この世界に来た時に終わってたはずの話だからさ、別に気に病む必要はないし」
「そう言えば、この世界に来る前の話って聞いたことなかったね」
「ちょっとツナには重いかもしれないけど、あくまでも今はもう関係ない話、過去の終わった話だからね。こんな話でくよくよ悩んで修行に支障きたされても僕がリボーンに殺されちゃうだけだからねー……。別に聞きたくないなら無理して聞かなくてもいい話だよ」
そう言ってケラケラ笑うけどちょっと自虐気味に笑ってるように見えた。もちろん俺にはそんな理沙ちゃんを放っておく事が出来ないんだけど。
「いや、聞くよ?理沙ちゃんは俺に話したいから呼んだんでしょ?」
「ツナは優しいねー、放っといてもいいのに」
「放っとけないって!だって理沙ちゃんは俺の仲間なんだから……!」
「(仲間、仲間か……)僕はツナの事仲間なんて思ってないから」
「え゛ぇ……!?」
理沙ちゃんの言葉にオレは危うくコップを落としそうになってしまって、手を離しかけて中身がこぼれかけた所で俺の手ごと理沙ちゃんの一回り大きい手が包み込んだ。
「仲間、異常だよ」
「……………………」
これって突っ込んだ方がいいの!?どうしよう、さすが補習仲間なだけはあr……っていやそんな場合じゃなくて!!!!
「異常じゃなくて以上って言いたいんだよね?」
理沙ちゃんの表情が固まった。
「…………」
「…………」
「這這狽オまったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「(ビクッ)ひぃっ!!」
「ツナより僕が馬鹿とか信じらんねーーーーーー!!!えっ!?あれっ!?僕ってツナより年上だよね!!??いやぁぁぁぁ!!!よりによってダメツナに負けたぁぁぁぁ!!!!」
「理沙ちゃん落ち着いて!!!って言うかそんなに大声でダメツナって言いふらさないで!!!!」
「はっ!!!!ごめん!!!そうだよ!僕はクールなキャラなんだから叫んじゃダメなんだ!」
「……そ、そうだね(クールキャラはすでに崩壊してる気もするけど……)」
突然ショック状態に陥った理沙ちゃんを落ち着けて(手に持ってたフォークが80度曲がってたのは見なかったことにした)、もう一度仕切りなおす。
「そう、この話はツナが仲間以上だから話せるし……聞いておいてほしいの」
「うん……」
わかった、以上で合ってるよ。うん。
「そうだねー、大分さかのぼって空音に会う前からのはなしになるんだけど……」
* * *
―――――――オレにはとてもじゃないけど想像できない話だった。
オレは親から暴力を受けたことも、強制的に暴力をさせられたり、家の家事をすべてやらされたり、そんなことはなかったのに……。
終始苦笑いしていた理沙ちゃんもいつのまにか3つ目のケーキを食べ終わってる所だった。
「……ま、そんな所です。それでツナが羨ましかったんじゃない?だから八つ当たりしちゃって本気で申し訳ないんだけどね……。なんだかんだ言ってもツナ、愛されてるもん。僕はツナと逢えて今は幸せだけど!」
「…………」
「ほーら落ち込むな凹むな!今は本当に平気なんだって!」
オレの肩をバシバシ叩いて気にすんなって言ってくる理沙ちゃんに、正直何を言ったらいいかわからなかった。
「……辛かったんだね。俺……、どうせならもっと早く理沙ちゃんに会いたかったな……、そしたら理沙ちゃんもそんな辛い目には……」
「なーに言ってんのさ、あれだって日常にしちゃえば平凡な生活なんだから。第一今ツナがくよくよしてどうすんの?」
「…………………」
「ハハ、マジ変な話聞かせてごめん」
「り、理沙ちゃんは悪くないよ!俺、理沙ちゃんには俺の知らない所で辛い思いしてほしくないから……!話してくれて、よかったよ……!」
「っ!!!!///(こ、この無自覚色男が……っ!な、何で時々、急にカッコよくなるのさ……っ!!!!)」
ツイッと目を逸らして、商店街を行きかう人の方向を見て理沙ちゃんはこう言った。
「…………言っとくけど、別に、仲間以上……とか、そんなに特別なポジションじゃないんだから……っ!」
「?」
えーと……こういうのを空音ちゃんはなんて言うんだっけ……?
「おい、ツンデレとマグロ。探したぞ」
「買Qッ!!!リボーン!!」
「白Nがツンデレだ!殺すぞ!!!!!」
* * *
「山本君!頑張ってね!」
「修行がんばってくださいね。失礼しましたー」
「二人ともサンキューな!優菜は今度寿司でも握ってやるよ!」
「おお!名案名案!山本君のお寿司美味しいんだよ!」
「あ、ありがとうございます」
そんな感じで道場から退散したあたしは道場から離れた途端に一瞬暗い顔を見せた優菜ちゃん。
「ん?ロリっ子ちゃん、悩み事?何でもかわい子ちゃんの為だけの正義のヒーローが助けてあげるよ?」
「……い、いや!いやいや!あたしそんなに可愛くないですし鼻息荒い気がする!!!!」
ハッ!!!言われてみれば……!しかしまぁこんな可愛い子目の前にして興奮しない方がおかしくない!?
「お願いですから興奮しないでください……!こ、怖いです……!」
「気にすんな☆ハァハァ……ほらほら何でも言ってごらん?????」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!(涙目)」
ハッ!!!(パート2)しまった!!!!泣かせる趣味はないのに!!泣かせるならツナって決めてるのに……!!
「ご、ごめん!!!また暴走しちゃって!!!よしよし!!!オジサンが飴あげるから!!!」
「…………それ、変質者の台詞です……」
「グハッ!!!何であたしは口を開けば……!きっとお母さんの教育がいけないんだ!!!」
「今すぐお母さんに謝ってください!!!!!」
「だってお母さんも腐ってたしあたし、小3の時にお母さんのBLマンガ読んだらうっかりハマっちゃって……」
「(一番いらない所を遺伝しちゃったんですね!!!!)」
「お父さんもロリコンで書斎に入ってみたら萌えるグへへなフィギュアが一杯……」
「(英才教育です!変態養成強化プログラムフルコース受けてますこの人!!!)」
「あとおばあちゃんh「もういいですから!!!!!」……おばあちゃんが一番すごいのに……」
「踏み込んだらいけない領域ですよそれ。一線越えて戻れなくなりますって絶対……、所で空音さん、正直あたしはごっきゅn……獄寺の様子が気になるんですけど……」
いつの間にか元気を取り戻した優菜ちゃんは俯きながらそう言った。
「あ、うん、あたしもそう思ってた」
「えっ!?」
バッと顔を上げて目を丸くした優菜ちゃん。
「フフフン、優菜ちゃんの性格もだいぶ分かってきたぞ……、君はさしずめヒロインの友達の妹タイプだな!」
「わき役もいい所じゃないですか!!!!!って言うか出番があるかさえも怪しい所ですね!」
「キョン子!」
「ハ○ヒネタ分かんないんですってば!って言うかそれヒロインの妹違います!!!!」
そんな会話を交わすあたし達は、10メートルくらい離れた所から遠巻きに送られてくる視線に気づかなかった。
「……あの第三夜。やっぱり隼人の様子を見に行くのか……」
そしてさらに5メートルくらい離れた場所からももう一つ。
「いやー、理沙ちゃんとツナはいい感じっぽいけど、こっちは波乱の予感だなー」
そして声のトーンを下げ、
「優菜ちゃん、君に獄寺を支えることはできるか?……過去に命を投げ出そうとしたお前に」
二つの視線には気づかず、二人は並盛山の裏山に向かって歩き続けた。
* * *
「僕達も……修行?……つまり、戦えと?」
「あぁ」
「そんな!!!俺は絶対反対だぞ!!!理沙ちゃん達をあんなに危険な奴に関わらせるなんて!!!!」
先ほど現れてエスプレッソを注文したリボーンがしっかり頷き、ツナが猛抗議をする。
しかしなぁ、戦いはできれば避けたいんだけど……。
「どっちみち、お前らは第三夜なんだ。いずれ戦火に巻き込まれることは予想がついてるんだぞ。その時にまともに自分の身を守るために戦えねぇようじゃ、困るぞ」
「マジですか」
戦火に巻き込まれる?戦火……争い?巻き込まれる……強制参加?……率直に言おう。
「冗談じゃねえ!!!!!!」
テーブルを叩いて僕は目の前の小さな赤ん坊に怒鳴った。となりにいた少年は驚いて身を竦ませる。
「第三夜なんだからしょうがねーだろ?」
「あぁ゛ん!?そもそも第三夜ってなんだよ!!!何で第三夜だからって戦火に巻き込まれるのさ!!??そこから説明しろ!!!!!」
第三夜って言うと僕だけじゃない。空音や優菜ちゃんもそうなんだ。僕は血の苦さを嫌というほど知ってるからこそ二人をそういった裏の世界に巻き込みたくなかった。
「……ケーキでも注文して落ち着け。話はそれからだ」
「そう言うぐらいならおごれ!!!!」
「(さり気なく理沙ちゃんがめつい!!!!)」
「しょーがねーなー。ツナ、おごってやれ」
「えぇ!?」
なんだかかわいそうなツナにまでおごらせるほど僕は性格悪くないので、さすがに助け船を出すことにした。
「ツナが嫌々おごるぐらいならケーキいらないからさ、無理しておごらなくてもいいからね!」
「でもツナ、理沙の事どっちかっつーと好きな女子なんだろ?男として甲斐性見せろ」
「っ!?」
「うるさいよリボーン!!!!……り、理沙ちゃん、き、気にしなくていいからね!//」
ニヤリと、とんでもない事を言い放ったリボーンを睨みつけながらも僕のケーキを何も言わずに注文してくれたツナ。
……ど、どういう意味……なんだろ……。
リボーンの台詞が気になって仕方が無い。さっき自分の気持ちをあるがまま受け入れるって決めてみると、なんだか、一挙一動が気になって仕方ないっていうか……。
「ツナって、僕のことどう思ってるの?」
「だから気にしなくていいって!!!!むしろ気にしないで!!」
「………………そうですか」
そんなことしてるうちにチョコケーキをウェイトレスさんが持ってきてくれた。これで4つ目か……、いくらでも食べれるけど。
「ん、これ一番安いやつじゃねーか。ケチだな」
「別に値段とかどうでもいいから!!!ありがとね、ツナ」
「う、うん……」
ツナが困ったように頷いた所でリボーンがさっきの話を再開させた。……こいつ、ツナで遊び過ぎだ……。
「第三夜っつーのはお前も知ってる通り、異世界から来たお前らの事を指すんだ。異世界からやってきた第3夜はマーレリング、アルコバレーノのおしゃぶり、ボンゴレリングの所持者のいずれかの元にたどり着くことになっている」
「それで僕らはボンゴレリング所持者……まだ候補か、のツナ達の元に来たわけか」
「どちらにしろアルコバレーノの元に来なければ、ボンゴレファミリーかジッリョネロファミリーに属することになるわけだからな」
「ジッリョ……?マーレリング……?ねぇリボーンそれってどういう事なの?」
頭に?マークが飛びまわってるツナにリボーンは、
「そうだツナ、修業の続きしてこい」
と言って、その瞬間に乾いた音は商店街に鳴り響いた。
「復・活!!!!!!!死ぬ気で修業する!!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
そんな感じで乱暴にツナを追い払い、何事もなかったかのようにエスプレッソをすすりやがった。
「……手段とかやり方とか選べよ」
「休憩時間はお終いだぞ」
さっきから暴れたり叫んだりを繰り返していたのに、周りはそんな僕たちを特に気にしない風だった。……慣れたんだね、きっと。それか絶対関わりたくないんだ……。
「つまり第三夜って、トゥリニセッテ……に関係するの?」
「お、よく知ってんな」
「第三夜だからねー、詳細は分からないけど世界の礎がうんたらかんたらでしょ?」
「ま、それとこれとはちょっと話は違うんだけどな。そんなわけで第三夜には特殊な能力が与えられるんだ。既に優菜と空音は目覚めてるようだが」
「な……っ!?え?ど、どういう事……?」
「空音はお前が家出してるうちに無意識だが、覚醒してたらしいぞ。お前もそのうちな。……だからだ。だからお前らを狙う輩はたくさんいる。」
「………特殊な能力ゆえに?」
「あぁ、初代たちは三人の力を合わせ時間さえ止めてみせたらしいぞ」
「マジでか!!!???そんな非常識な事があっていいわけないだろ!?」
「ま、だんだん力が弱くなっているのも確からしいがな。もしお前らに初代並の力があったなら、片手で簡単に雲雀ぐらい倒せるからな。それはともかくそれでも常人並じゃない力を持っているのは確かだ。それを悪用とか、研究材料として手に入れたい奴もいるって話だ」
「……そうですか……巻き込んだティファナぶっ殺す」
あいつがトリップさせなかったらこんなことにはならないし、狙われたりもしなかっただろうに……!!!!
「でも、もうお前こっちの生活の方がいいと思ってるだろ?」
あっさりと見透かした事を言ってきやがるリボーン。……確かに否定が出来ないのも事実なんだけどさ……。
「僕は、博愛主義者ってわけでもないんだけどさ……、ただ……、人を殴るのって気分良くないんだよね。前は見て見ないふりして我慢したけど。やっぱり空音を殴るのとは話が違うわけじゃん……。それに、空音や優菜ちゃんまで命を賭けて戦うのはいただけないよ……」
そんなことしたら、あの子達の心まで壊れてしまいそうで……。僕みたいになってほしくなかった。
「だが、避けて通れないのも事実だ。ティファナが武器をよこした理由に一つがそれだぞ。この世界に第三夜として来ちまった以上避けて通れねぇ道なんだ」
「避けたい避けたい避けたい避けたい避けたい避けたい避けたい避けたい逃げていいですか?」
「死ぬぞ?」
リボーンが黒い銃をどこからか出して、僕を狙うわけでもなく胸の前で構えた。それはマフィアの世界を象徴してるように見えた。
「…………わかった。僕は修行する。……僕自身だけじゃなくて、他に守りたいものがあるからね」
それは、ツナ達だったり、一緒にトリップしてきた二人だったりするけど、口には出さなかった。でも、と僕は区切って言う。
「空音と優菜ちゃんの事は、あの子達自身が決めることだから。くれぐれも無理やり修行させないでよね?そんなことしたら僕がお前を殺しに行く」
「……おまえ、あいつらの姉御みてぇだな」
「せめて姉貴って呼べ!」
いや、姉貴って呼ばれたいわけじゃないけど……。ただ、やっぱり心配なんだよ。
「先に言っておくが、優菜は既にヴァリアーで修業を受けているぞ。門外顧問でも少しな」
「絶対強制された!!!!絶対無理矢理だ!!!!!」
可哀想だなオイ!!!あの子絶対そういうの嫌いだぞ!!!!そりゃ相手がヴァリアーじゃ逆らえないよな!!!
「それでも、今はツナ達の仲間だから、今は優菜ちゃんに決めさせるべきだよ。優菜ちゃんが嫌って言うなら僕があの子を守る」
「……空音がいたらかっこいいだの喚いて大騒ぎだな」
「だろーね」
僕は苦笑いして、最後の一切れを口の中に放り込んだ。甘くておいしい。
「優菜とお前ってあんまり会ってから時間がたってねぇじゃねぇか。随分と気にかけるんだな」
「……優菜ちゃん、僕に似てる気がしたから……。そりゃ性格は全然違う気がするんだけど……」
「そうか」
「あ、それよりお金どうすんのさ?ツナはパンツ一丁で崖登りに行っちゃったじゃん」
「俺がそんなこと考えてないとでも思ったか?」
ニヤリと笑ったリボーンの手にはツナのお財布が。……コイツ、人でなしだ!!!!
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