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非日常的な日常
1



理沙はやっぱりツンデレだねっ☆





ごめんね、それとありがとう、ツナ。そして……





間の悪い人ってあたしの事を言うんですね!?本当にすみません……!!!!





Action.15〜極限パワー〜





「あーぁ……僕、何やってるんだろ……」

ツナに平手打ちをかました右手を見る。

「これ、八つ当たりだよね……、サイテーじゃん」

まだ歩いた事のない野道を踏み分ける。

「おまけに飛び出した結果迷子になるし……。ここはどこだよ!!」

どうやら僕は山の方向に向かって走っていたらしく、無意識のうちにダッシュしちゃったので帰り方も分からない。

並盛山の一角だと思われるが、僕は林と更地の間を歩いていた。

なんつーか、並盛って緑豊かだよなぁ……。

「まいったなぁ……。ツナにも謝らなくちゃいけないし……」

右手にうっそうと茂った林、左手に岩がゴロゴロ転がってる更地。

……なにもこんな所にこなくてもよかったじゃん!!!バカじゃないの僕は!?

「……っていうかバカなんだよね。これ、遭難ですか?遭難ですよね?情けないにも程があるんだけど……」

僕は歩きながら考える。

―――ツナを平手打ちしちゃったのは、間違いなく八つ当たりだ。

僕は家光さんと船上で釣りをした時の事を引きずっていて……、うん、京子ちゃんの事とか、クソ親父の事とか……。

クソ親父かぁ……。

『理沙!!酒買って来い!!』『何やってんだこのクズが!!』『このガキ使えねーな!!』『うるせぇ!俺に指図すんじゃねぇ!!!死ね!!』

なんつーか、やっぱり嫌いだな……。僕の口が悪いのもぜってぇクソ親父のせいだし……。僕の暴力癖もなかなか治らねぇしなぁ……。

あーあ……ツナ優しいからこんな僕でも心配するんだろうな……。

いっそ嫌いになってくれていいのに……。



* * *



「まぁ、大体そんな感じだな」

「…………理沙の睡眠を妨害するなんて自殺行為だ……!あの、暴言とかすごくなかったですか?」

「ワッハッハッ!!よく分かったな!凄まじかったんだぜ?理沙ちゃんからひっきりなしに殺意を感じたからな!ありゃあ間違いなくヤクザのもんだな」

「………………(理沙さん怖っ!!)」

ツナに頼んで家光さんからなんの話をしていたか訊き出したあたしは、これで納得したと頷いて言った。

「うん、話してくれてありがとうございます!」

「いやいや、理沙ちゃんと何があったかわかんないけど、二人ともツナの事よろしくな!」

「はい、分かりました」「もちろんこれからも愛でていく所存でございます!」

そしてツナの家から出たあたしに優菜ちゃんは袖を引っ張ってきた。

「あの……」

「んー?どうした?(これであたしの方が身長高ければ、袖引っ張りと上目づかいの最強コンボだったのに!!!!)」

「家光さんからの話で何かわかったんですか?」

「あぁ、分かったって言うか、確信が持てたって感じ?ああ見えて、理沙の家って大変だったし、まぁ……素直になれないって言うか……ツンデレだし?」

「(ツンデレ関係なくないですか!?)」

「それでこれから理沙と話したいんだけださ……、今行方不明なんだよねー……並盛町って広いからなー」

ツナはもう修行に行っちゃったし、よってリボーンもいない。今回の件に関しては家光さんに手伝ってもらうわけにはいかないし……。

『ああ゛ん?これ位いつのも事だし……、ほっとけよ。チビ。うぜぇんだよ』

まだ3次元世界で中学校2年生の時、お互い顔を知って間もない時。ほっぺたに大きいガーゼを着けた理沙が一人で眉間にしわを寄せて何か考え込んでいた時に心配して声をかけた事があった。結果、拒絶されてしまったけど。

理沙は転入生だった。いつも怖い顔をしてタバコを吸い暴言を吐き、文字通りの不良だった。そのせいで、みんなから怖がられて彼女は瞬く間に孤独になってしまった。それを彼女は何でもない当たり前の事として受け取っていた。理沙の第一印象はツンデレ候補だった。

「あの、あたしも理沙さん探すの手伝います……!」

優菜ちゃんの申し出に苦笑いして返事をする。

「でも、まだ並盛って歩き慣れてないでしょ?」

「あ……っ!」

ハッとした優菜ちゃん……かわええ!!でも、すぐにシュンってなってごめんなさいなんて言い出すからあたしは慌てて言い繕った。

「別に気にしなくてもいいよ!……あ!そうだ!じゃあビアンキさんと町内探検も兼ねて頼まれてくれる?」

「!はい!」

よかったー!そういえばビアンキさんならきっと頼りになるはず!むしろビアンキさんの方があたしよりいい事言えると思うし!

…………理沙、心配だなー……。



* * *



なんと言う事でしょう!僕が歩き続けた結果、たどり着いたのはあの二人の所でした。

「うおおおおお!!!極限の走りまわりたいぞっ!!!」

「いいから休んでろ!コラ!」

…………………………素晴らしき体育会系の漢達だった。大きな声がするから行ってみた結果がこれだよ!

「……ん?そこに居るのはだれだ!!コラ!」

あ、さすがコロネロ。僕がちょっと近づいただけで気づいて体を起こしてライフルを向けてきた。……コロネロと初対面だから警戒するのは当たり前か。

どうでもいいんだけど、どうやったらあの陸の孤島に了平は移動したんだろ……。だって、あの岩完璧に孤立してるよ?つかここは本当に日本ですか?

「おお!理沙ではないか!!こんな所で何をやっておるのだ!?沢田が心配しとったぞ!?」

あー……、ツナ心配してくれてるのか……。早く帰って謝らないとって改めて思った。

「了平ー、僕迷子になっちゃってさー。あぁ、初めましてコロネロ。僕は夜乃理沙といいます」

僕が名を名乗るとコロネロは眼を見開いてライフルを下した。

「!!お前がリボーンの言ってた第三夜の理沙か!」

「まぁ……、はい。それでちょっと聞きたい事があるんですけど、沢田家に帰るのはどっちに歩いて行ったらいいですかね?」

「そんなの来た道をそのまま戻っていけばいいだろコラ!」

そりゃそうだけどね!

「分からないから迷子になったんだよ!」

「……まぁいい。ちょうど腹も減ってきたし、帰るぞ!了平!」

「了解したぞ師匠!!!」

するとどこからかファルコが飛んできて、了平の肩を掴み背中にはコロネロを乗せて飛んで来た。

「…………ファルコって力持ちだね」

「そりゃ俺の相棒なんだから当然だコラ!!」

理屈がわからねーー!!!!

「師匠のハトは極限だからな!!!」

意味がわからねーーー!!!

「ハトじゃないぞコラ!」

「そうだった!カラスだったな!!!」

どう見ても違うだろ!!!!

おかしいなぁ、何で空音がいないのにこんなにツッコミ疲れなくちゃいけないんだよ……。

「それじゃ行くぞコラ!」

「おう!」

「はーい……」

あたしを遥かに超える頭の悪さを見せつけられ、コロネロを先頭に、あたしと了平が横に並んで歩きだした。

「なぁ、理沙」

「何さ?」

珍しくまじめな顔の良平に耳を傾ける。

「沢田から聞いたんだが喧嘩したそうだな」

なるほど、喧嘩って事になってるんだ……。

「……あれは、単なるあたしの八つ当たりだよ」

「うーむ、詳しい事は聞いてないし、聞いたとしても忘れてるが、オレは漢同士なら拳で語れると信じてる。だが、女子の場合はそうでもないと思うぞ?俺らにはよく京子や三浦の気持ちが分からなかったりするしな。だから言葉で伝えることも必要だと思うわけだ」

!!!!????

「了平でもたまには真面目な事も言えるんだ!?」

「バ、バカにするな!俺だってやるときは極限にやる漢だぞ!」

……とまぁ、ちょっとからかったりしてみたけど、僕も了平の意見は正しいと思う。


「ま、もちろん謝るけど……。あのさ、もし了平に好きな人がいて、その人が他の人を好きだったらどうする?」

僕は声をコロネロに聞こえないようにひそめて訊いた。もちろんこれは京子とツナの事だ。了平の記憶力ならすぐにこんな話忘れてくれるだろう。了平はウム、と考えて二秒後に答えを出した。

「オレは色恋沙汰なんて分からんのだ!!!」

「ちょ!コロネロに聞こえる!!」

単純明快、諦めもいい極限漢、それが笹川良平だった。

「オレは何も聞いてないぞ。オレの事は気にすんなコラ!」

絶対聞こえてるし!!!!

「そうだな……、オレは何事も全力で挑みたい。だからまずは自分の気持ちを伝えておいて、それで極限に念じる!

「念じる!!!???」

「おう!勝利の女神は絶対諦めない人間にほほ笑むものだからな!!!」

念じるっていう奴は初めてだ……。

「理沙は好きなやつがいるのか?」

「さぁ……、もしかしたらこれは空音の話だったり優菜の話だったりするかもしれないよ?」

「……はぐらかされるの好きじゃないんだが」

「じゃあ女の子の秘密をむやみに詮索すんな」

「だが理沙はどちらかといえば男女だと思u≪ボガッ!!≫今のは極限に良いストレートだな!!!お前なら女子部員としてボクシング部に歓迎するぞ!!」

「死ぬ気で断る!!!!!!」

……うっかり癖で殴っちゃったけど……、コイツ全く応えてねぇ……!!!

「体験入部でもいいのだ!……と、そう言えば何か言いたい事があったのだが……」

「?」

「おお!そうだった!じゃあその片思いの人間に極限パワーをこめて伝えてくれ!」

『極限に頑張れ!諦めたら終わりだぞ!』


「……分かった」

不思議と、その言葉は僕の背中を後押ししてくれるような気がした。

頑張れ……諦めたら……終わり。

一見どこでも良く聞く言葉で、そんな言葉は今まででも良く耳にしていた。

だけど、了平が言うと力強く、僕の心に届いてきた。

「……相談聞いてくれて、ありがとね」

「おう!どうせ1週間後には忘れてるがな!!」

確かにその通りで僕がつい笑った頃、コロネロが振り返った。

「二人とも、街に着いたぞ!了平はこれから昼ご飯だろ!俺にも食わせろ!」

「了解だぞ!師匠!!今日は極限うどんが食べたい気分だな!理沙はこれからどうするのだ?」

「んー、ツナの所に行ってくる。謝らなきゃだし」

「わかった!」

今日は、了平の好感度が急上昇した日だな。僕は了平達と別れてツナの家に向かう事にした。

「……ってツナは修行じゃね!?どこでやってんのさ!?」

と頭を抱えて、ついでに腹ペコなお腹も抱えて、帰路につくのだった。




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