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山本攻略マニュアル
君のしあわせが、僕の不幸だった。ただそれだけ(骸→山)



「なぁー!」


「……なんですか?」


黒曜ヘルシーランドの一角、彼はまたやって来た。


「いい加減名前教えてくれよー!なんであんたがおれの名前を知ってるのかも!」


オレはあんたの名前しらねーのによぉ!なんて言いながら背後からギュウッと抱き締めないでください。


君はいつもスキンシップが過剰過ぎるんですよ。理性がぶっ飛んだらどうしてくれるんだ。


「君は僕の名前なんて知らなくていい」


「そんなこと言われたらますます気になるじゃねーか!」


背後から抱きつかれているので表情はわからないが、おそらく彼お得意のニカリという笑いを浮かべてるのだろう。ああもう僕を前後に揺らさないでください。


「いくら気になっても教えてあげません」


君は、並盛中の人間でしょう?まさかとは思うがもしも君がボンゴレの知りあいだったりしたら、君は僕の敵だ。


「ドケチー!」


「なんとでもどうぞ」


やれやれ、君も僕も本当に物好きですね。どうしてこのようないかにも、否本当におバカな人間に……。


僕らが知り合ったのは僕が日本に来て間もない頃、ボンゴレ10代目がいる並盛中学校を視察していると、どこからともなく飛んできたのが野球ボール。


無論犯人は彼、山本武だ。お詫びと言ってヘルシーランドにまでいくら僕が突き放しても付いてきて、寿司を寄こそうとする彼でもなぜか嫌じゃなかった。


要は好き、という感情です。


「しっかし本当にこんな所に住んでんだなー」


だが、君と僕では住む世界が違い過ぎました。君は表の世界で生きているんです。


「ひっこさねーのかよ?」


「ひっこしませんよ、いえそのうちに姿を消しますがね」


「? どっか行っちまうのか?」


「教えません、それよりそろそろ暗くなってきました。帰らなくていいのですか?」


気づけば外はオレンジ色に染まっています。


今日、今日で僕は君とは縁を切りましょう。今夜限りです。


そろそろ黒曜中も征服したことですし行動に移さないといけません。


「あー、そーだな。また明日な!」


そう言って僕をパッと開放して、部屋の扉のドアノブに手をかける。


「……何言ってるんですか、明日は学校でしょう?」


「学校帰りに寄るんだってば!いいよな?」


「だめです。こんなところに来てはダメですよ」


そう言った途端、彼は僕のオッドアイの瞳を臆することもなく覗き込んでこう言いました。


「……おまえ、なんか変だぞ?もともと変わった奴だとは思ってるけど今日は特に」


その瞳があまりにも真剣で僕でさえ気圧されそうになってしまいました。


「、何もありませんよ。後半のセリフも余計なお世話です」


「そっかオレの勘違いか……」


セリフとは裏腹に納得いかないという顔で頷く彼。


「さて、いい加減に帰らないと君の親が心配しますよ」


というのは、建前ですが。


「骸の方がお母さんみてーなのな……っとそんなに睨むなよー」


おや、睨んでるつもりはありませんでした。


「ま、本当に帰らねーとおやじに叱られっからな」


本当に、早く帰ってください。君が記憶に残っていると苦しいだけで利点が一つもないんですから。


「じゃあな!今度は名前教えてくれよ!」


そして、キィ…と扉を開き一度チラッとこちらを見て彼は去りました。


僕の世界から姿を消しました。嗚呼、なんという空虚感なんでしょう!


「……彼となんか出会わなければ……。名前もお互い知らないのに、どうして彼は僕の心をここまでかき乱すんですか……!」


(名前を教えるということは、相手とのかかわりを持つこと……。
純真な君と汚れた僕は他人同士、その方が彼にとって幸福なのです)




確かに恋だった


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あきゅろす。
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